後藤敏夫のグローバル教育情報

ニュースレター

アジア大学ランキングの意味 ⑤-1 ナショナルブランドが堕ちる

2018.03.01

 日本で国際大学ランキングの順位下落が話題になると「またランキングの話ですか」「基準が不適切なのでランキングは信頼性が薄い。従ってあまり神経質になる必要はありません」と多くの識者が語りますが、実は大きな誤認。事態は深刻です。国際的な大学ランキングの基準は、いわばスポーツの国際大会のルールのようなもの。国際的な基準に沿って大学が提供する商品・サービス(=教育・研究)の価値が判断されます(様々な社会情勢やステークホールダー達の事情で基準は時々変わります)。基準の内容の是非より、日本人が【グローバルな視点で評価基準を考察しないこと】【基準作成にほとんどかかわっていないこと】の方が大きな問題です。

東大、京大が11位以下に落ちたことの意味

 東大、京大がQSアジア大学ランキング2018で11位以下に順位を落としたということ(東大13位、京大は17位)が世界ランキングで下落する以上に大きな衝撃となって伝わっています。実態より「アジアの中でトップレベルの大学」がもはや日本には存在しなくなったことの象徴的意味合いのほうが大きいと思われます。ナショナルブランドとしての日本の最上位大学の価値が2級品に下落したというマイナスの喧伝を世界中にすることに他なりません。

 当地シンガポールではかなり前から、東大、京大はかつてのアジアのトップレベルの大学ではなく、良質な教育と研究を安価で提供する、日本のレベルの高い大学(無印良品?)というイメージになっています。

 国際的なランキングで順位が下がるということは「国家のブランドイメージまでも下げてしまうこと」を認識すべきです。

 因みにベスト10位までにランクインしている国別大学数は、シンガポール(2←1)、香港+中国(4+3←3+1)、韓国(1←3)、そして日本(0←2)です。

(※図1)QSアジア大学ランキング2018‐2012 国別大学カウントの比較 chart01

(続く)