後藤敏夫のグローバル教育情報

ニュースレター

アジア大学ランキングの意味 ③ シンガポールと中国・香港

2018.01.24

圧倒的な力を発揮するシンガポールの大学

 アジアの高等教育・研究・人材育成の中心は、何といってもシンガポール。ナンヤン工科大学(NTU)<1位(2018年度QSアジア大学ランキング)←2位(同2017年度)>、シンガポール国立大学(NUS)<2位(同2018年度)←1位(同2017年度)>の世界トップレベルの2大学と2000年に創立された新興のシンガポール経営大学(SMU)<71位(同2018年度)←60位(同2017年度)> です。この3大学はアジアの教育。研究を牽引し、随一のG型度を誇ります。シンガポールの大学のメリットは次の5点と言えるでしょう。

① すべて授業が 世界のリンガフランカ―英語で行われること。

② この3大学はアメリカ、イギリス等の世界のトップクラス大学と提携、アカデミックな人脈構築が容易なこと。

③ 政府と協力企業の手厚いサポートのもと、大学内で各分野の先端研究を行っていること。

④ 大学周辺に各種一級の研究機関が集積していて、研究に関する情報収集に有利な立地であること。

⑤ シンガポールは治安が極めて良好である上に、ムスリムフレンドリーな風土なので、世界で最大信徒数を誇るムスリム諸国の学生を集めやすいこと。

「一帯一路」構想と中国の高等教育戦略

 2013年に、中国は習近平主席の指導の下、一帯一路構想(※1)を発表しました。 陸海のシルクロードの沿線にある70か国を中国の主導で開発を進め、経済圏を作ることを構想しています。そのファイナンス機能を一手に担い覇権を握るべくアジアインフラ投資銀行(AIIB)を中核に資金を先進各国から調達、大規模な開発を計画しています。

 この構想の中で、中国の主要大学を更にレベルアップ。特に中国3大大学と言われる 清華大学<6位(同2018年度)←5位(同2017年度)>、復旦(ふくたん)大学<7位(同2018年度)←11位(同2017年度)>、北京大学<同順位 9位>は既に世界トップレベルの研究・教育を行っています。この構想で今後の経済発展が期待される東南アジア、南アジア、中央アジア諸国を中心に優秀な留学生、教授陣を招聘し、生命科学、情報科学系、建築・土木系、工学系、理学系コースを中心に中国の主要大学のG型大学化(※2)を図り始めています。言い換えると、中国の主要大学を一帯一路構想の研究・教育拠点にする戦略と言えるでしょう。

(続く)

※1 一帯一路構想
「一帯」・・中央アジアから欧州に陸路のシルクロード。
「一路」・・南シナ海からインド洋を通りヨーロッパに向かう海上シルクロード
ユーラシア大陸に「広域中華経済圏」をつくる狙い。中国版の「マーシャル・プラン」(第2次世界大戦後に、米国が西欧を援助することで自国通貨や文化、商品を広めた計画)といわれる。

※2 G型大学化:
① 授業の英語化(リンガフランカ)
② 学生の多国籍化 
③ 教授陣の多国籍
の3つがG型大学化の指標と言われる。

表1:QSアジア大学ランキング2018

QSアジア大学ランキング2018