先日、最新のThe Times Higher Educationで、アジアの大学のランキングが発表されました。(
※ Asia University Rankings 2016?より)
日本のニュースでも大きく取り上げられたので皆さまご周知と思いますが、わが国の最高学府である東大が総合1位から7位へと大きくダウングレードされてしまいました。
報道にある通り、このランキングでは研究の質はアジア1位の座に長年輝いていますが、「学生と教授の国際性」の評価で20位という不名誉な低い評価となっています。
多くの報道では、ランキングの高いシンガポールや中国の大学では「国家戦略として、潤沢な資金を投入、海外から優秀な教授陣を招聘している」として、高等教育の卓越さが国家価値と国力の高揚としていることを紹介しています。日本でもそうした国家規模での高等教育強化への取り組みが更に必要であることは疑問の余地がありません。
成長するアジアという立地を生かす高度な戦略性と迅速な対応
アジア諸国の高等教育は今や、激しいメガコンペティッションの渦中にいます。AEC(アジア共同体)の域内経済統合や南アジア諸国の経済発展は、旺盛やインフラ需要や各種の消費材需要を掘り起こしています。こうした状況下、高等教育への進学率が急上昇、各国は主要な研究教育機関(大学・大学院)の急激なグローバル化とエンハンスを推進しています。
各国ともそれぞれ異なった戦略を採ってしますが、共通するのは次の3点です。
1.? 各国の大学をG型大学(グローバル型)とL型大学(ローカル型)に二分、上記戦略はG型大学に集中的に採用していること。
2.? G型大学は、
DLE(2重言語政策)を採用、研究・教育のグローバル化に迅速に対応、成果を上げていること。キャンパスのグローバル化(外国籍の教授・研究者・学生の比率が急激に上昇)が急速に進んでいること。学問の共通語-英語環境の整備は非英語圏諸国にとっては越えなければならないハードルですが、これらの国のG型大学の多くはクリアされています。
3.? 各国の中等教育制度の認知度があがり、互換性が高まっています。特に、旧イギリス連邦諸国が採用しているGCE (Genaral Certificate Education) A-level 系カリキュラムと国際バカロレア<International Baccalaureate ? IB>の認知度は極めて高く、評価が高いことはご周知と思います。
特にアジアでは高校段階に大学進学準備過程があり、大学は第一学年から専門課程が開始され、3年で修了する【ヨーロッパ型教育システム】が一般的です。
一方、4年制の大学制度を敷くアメリカでも、従来より高校課程で成績優秀者にはグレード11と12(高校2年と3年相当)の時に、高校卒業資格の一つ上のレベル(大学の教養課程の導入レベル)のAP(Advanced Placement)が提供されてきましたが、近年では、APより更に評価が高い大学進学準備カリキュラムである国際バカロレアDPがグレード11と12の二年間(高校2年と3年相当)に提供される進学校が激増しています。大学もこれに対応して、APやIBを高いスコアで修了した学生には大学入学時にコースの一部単位が免除になり、3年半から3年で早期卒業できる特典が与えられています。アメリカ型の4年制の大学制度を採用している日本がグローバルに競合するためにはこのような【優秀な学生を早期に大学に入学させたり早期卒業させる制度】を早急に導入する必要があります。この実現のためには、中等教育への日本語DPの導入だけでなく大学制度そのものの変更も必要となります。
アップグレードする大学には世界中から優秀な教授陣と学生が集まる環境がある
グローバル化のための予算投下だけでなく、世界トップレベルの優秀な研究者が厳しく切磋琢磨・競争する環境の整備が必須になります。高度なリサーチができる研究集積拠点の存在。特に先端研究の分野で、連携するグローバル企業の活動拠点の存在も必須です。これらの企業が活動しやすい社会環境(優秀な人材の採用しやすさ、研究者の快適な居住環境、税制等が)これらの環境整備は一大学だけでできることではありません。このランキングで上位を占める大学の殆どは、国家プロジェクトの一環でG大学化を強力に推進しています。
グローバルなパートナーシップ
もう一つ重要なポイントは世界各国のトップレベルの大学・研究・教育機関(大学・教育)と有効なパートナーシップを締結・活動することです。今年、
ランキング最上位に輝いたシンガポール国立大(NUS)がコラボレーションを行った
デユーク-NUSメディカルスクールとアジア随一のリベラルアーツカレッジである
イェール-NUSカレッジは特筆すべきプロジェクトでしょう。このほかアジアで上位にアップランキングされている大学はどこも極めて有効な世界の一流大学とのパートナーシップを締結、盛んに活動しています。
(続く)