【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 グローバル化が教育の世界に押し寄せる
2013.09.10
2013.09.10
グローバル化という大波が教育の世界に押し寄せる
遅まきながら日本も教育開国=教育のグローバル化を推進する教育政策が注目を浴びています。本年3月以降、自民党教育再生本部、中央教育審議会等から次々と報告、答申が出され、下村文部科学相からも、教育のグローバル化を後押しする思い切った方針が発表され各界に大きな波紋を呼んでいます(TOEFLのスコアを基準とした大学選考、海外大学進学を可能にするカリキュラムを導入するスーパーグローバルスクール、日本語IBの導入等)。 与党自民党は参議院選挙で勝利したため、今後、教育改革の具体的な実施に着手すると思われます。 東京大、京都大、九州大をはじめとする旧帝大系国立大学や早稲田大、慶應大、上智大等の難関私立大学は授業の英語化、4学期制導入と中期留学(半年~1年)の奨励、外国人教員の積極的雇用等の教育のグローバル化対応を急速に進め始めました。またグローバル人材の育成を建学理念に据えた立命館アジア太平洋大(APU)、国際教養大学(AIU)は全く新しいグローバルな大学として出発し、建学10年ほどですでに人材育成に大きな成果を上げて注目を浴びています。 これらの世界の大学のグローバル化は、海外生の教育環境にいったいどのような影響をおよぼすのでしょうか?共通語=英語の拡大と世界の多極化(豊かな地域の拡散)
20年ほど前からグローバル化の潮流の中で、世界各国の大学教育のバイリンガル化が目立ち始めました。 EUでは各国まちまちだった加盟国の大学・大学院単位制度の統一(ボローニャプロセス)と授業の英語化を強力に推進しています。各大学にとって優秀な教員や学生を国籍にかかわらず集めやすいという直接的メリットだけでなく、将来重要になるグローバルなネットワーク作りに大変有利だからです。卒業後、加盟国のグローバル企業就職が有利なこともあり、EU加盟国以外の学生も多数集まり、グローバル時代の新しい大学モデルになっています。 ASEAN各国、南アジア、台湾や香港でも大学教育の英語化とグローバル化がかなり進んでいます。英語圏であるシンガポールはもとより、香港、台湾、タイ等の上位難関大学(NUS-シンガポール国立大、南洋工科大、香港大、香港科学技術大、台北大、タイ王立チェラロンコーン大等)が授業の英語化と単位互換や柔軟な編入対応によって教員と学生の多国籍化に成功しています。高等教育のバイリンガル化は世界の潮流
近年、欧米や日本の経済成長が停滞気味なのに比べ、アジア、中東、アフリカという非西欧の地域の経済成長は目ざましいものがあります。GDP(国内総生産)の上昇にともない大学進学率が急速に上昇しています。彼ら大学卒の多くは自国語=民族語ではなく英語で高等教育を受けています。経済活動が活発化している世界の各地域において、英語が、国家・民族・宗教の枠を超えビジネスや学問研究やプロジェクトの共通語として拡大しているからです。インターネットの急速な普及も英語拡大の大きな要因です。世界のインターネット上の情報の約80%が英語によるものだといわれています。英語を母語とする地域以外でも英語を使いこなせることがグローバルという舞台に立つ基本条件になったのです。事実、アジアの多くの国々の大学卒は英語が使えて当たり前という状況になっています(その点、日本は甚だ立ち遅れています)。 ちなみに言語学者のデビット・グラッドル氏によると、英語を使う人口が2010年時点で約20億人、英語使用人口はまだまだ拡大すると予想されています(その中でネイティブの占める割合は4億人にすぎません)。それでは、このグローバル化の波に対して、日本の大学はどのような対策をとっているのかについて、次号でお話しいたします。(続く)
(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2013年9月号(2013年8月20日発行)に掲載された内容です。)