子供たちが成人する10年後の社会・企業を見据え教育を考える
日本にも教育開国の流れが波及
安倍首相は5月17日、「グローバルを軸にした大学改革」を成長戦略の第2弾として発表し、大胆な国際化を打ち出しました。世界大学ランキングトップ100に10年で10校をランクイン(現在は2校)、国立8大学で外国人教員を今後3年間で1500人に倍増、TOEFLの卒業要件化、などがその内容です。
また、文部科学省は6月5日、大学入試センター試験を5年後をメドに廃止し、高校在学中に複数回受けられる全国統一試験を創設する検討を始めました。
こうした政治の流れにのり、東大、京大をはじめとする上位大学は授業の英語化と教員・学生を中心とした教育のグローバル化対応を急速に進めています。この3年~5年の間に、半世紀に1度おきるかどうかの大きな変化が起こる可能性が大です。その変化は下記の通りです。
1.大学の授業の英語化
「学問やビジネスに関する専門的内容を英語で読み書き、議論できる」「国を越えた豊富な人脈を持つ」既にアジア各国の上位大学は続々とこのようなグローバル人材を輩出しています。
日本でもこうした流れは急速に強まっています。理工系学部の専門科目もすべて英語おこなわれる名古屋大、早稲田大、上智大等のコースには、優秀な留学生の獲得とキャンパスの多国籍化が期待されています。今後5年間に教養科目の50%を英語にすると宣言した京大や、九州大学の同様な動きには大きな衝撃が走っています。
今後は、上位大学の教育は日英バイリンガル化が急速に進み、それ以外の大学は日本語による専門職業教育に2極化しそうです。
2.大学「バイリンガル化」に対応する入学者の英語力
英語による授業が可能な学生を増やすには、大学入学試験の抜本的変革が必須です。自民党の教育再生会議からもTOEFLのスコアを基準にする提言が出ています。『入試科目としての英語の勉強』から『専門科目を英語で勉強するための学力』へ大きく転換するでしょう。英語圏をはじめとする上位大学ではTOEFL 90以上というのが一般的な足きりスコアになっています。(今回の答申では上位30大学の入学時ではなく卒業時のスコアが90という目標設定がなされています。)
入学時の英語力がTOEFLを基準にするようになると、大学入試だけでなく中学・高校の英語教育が大きく変わることは間違いありません。近年文部科学省が目指したコミュニケーションを重視した英語ではなく、「読む、書く、話す、聞く」の4技能のバランスのとれたアカデミックな英語が学習の指針になります。
3.小学校英語の正式教科化と大きく変わる中学受験
英語学習にとって10歳~12歳はとても重要な年齢です。学習の開始年齢が10歳以前とそれ以降では、学習効果とその後の伸びが大きく異なることは多くの例が物語っています。教育再生本部も英語を小学校4年から正式教科とする提言を発表しまた。この流れを受けて今後中学受験科目に英語が入ることは確実です。少なくとも「算数・国語」+「理科・社会・英語から1科目選択」のような方式が多くなりそうです。(続く)
ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫
Spring 6月25日号(2013年)掲載