子供たちが成人する10年後の社会・企業を見据え教育を考える
「グローバル化の中、10年後の企業や社会はどう変化するか?」
日系企業の国際人事担当者に質問すると、一様に5つの回答が返ってきます。
①? 社内の英語公用語化とオフィス所在地域の民族語の併用(日本語も民族語)。
②? 社員の多国籍・多民族化。
③? 日系企業の本社機能がシンガポールなどの成長地域のハブ都市に移転。採用では日本人と外国人を同じ基準で選考。
④? どこの国にも勤務可能、が採用の基本条件。
⑤? 上記のようなグローバル化対応が急速に徹底。
日系企業に入社しても、上司や同僚がアジア系や欧米系の人々というのが自然になりそうです。
2015年ついに日本語によるIB国際バカロレアが導入される
ますますグローバル化が加速する中で、同質性が前提の日本の従来型教育(=文部科学省カリキュラム)がうまく機能しなくなるのは当然です。多様性(Diversity)と流動性(Mobility)が必須のグローバル化した社会に対応し、各国の大学が入学条件として認める国際バカロレア・ディプロマを日本の大学も採用することが急務です。
今年5月、日本の文部科学省と国際バカロレア機構(IBO)は、2015年から日本語によるIB(国際バカロレア・デュアルランゲージ・ディプロマ・・略称日本語DP)を導入することで合意、と発表しました。明治以来、独自のカリキュラムにこだわってきた日本にとっては教育行政のコペルニクス的転回です。今後、文科省内にIBの文書を日本語に翻訳する部署を設置し、IB導入検討校や教育関連機関による連絡協議会を発足させ日本語DP導入時の諸問題を協議していくこと、などが決まりました。DPカリキュラムは英語、フランス語、スペイン語が学習言語でしたが、非ヨーロッパ語で初めて日本語が指定されます。
現在日本ではデイプロマ認定校が16校ありますが、すべて学習言語は英語です。日本語DP導入という大胆な手法により、文科省の壮大な目標である「2018年までにDP200校導入」が急に現実味を帯びてきました。当面は様子見の学校が多いですが、私立上位難関校や公立TOP校が日本語DPを導入するのは時間の問題でしょう。
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DP必修6科目のうち3~4科目は日本語で学習可能に
DPでは計6科目を学習することが求められます。日本語DPの場合、英語、数学、物理、芸術は英語での学習が必須、それ以外は日本語で履修可能となりそうです。英語で学習することで生じる生徒への負担に配慮というよりも、政治学、経済学、化学、生物学、心理学等を英語で、しかもIBの手法で教えられる教員の確保が難しいという問題が大きいでしょう。世界の流れに乗り遅れまいとする文科省とIBを非西欧諸国に拡大したいIBOの思惑が一致し、大胆な合意が実現したようです。
文部科学省とIBOが設定したロードマップです。 2013年10月 第一回候補校IBOへの申請提出 2015年2月頃 第一号の認定校が誕生 2015年4月 第一号認定校に1年生が入学 2017年11月 日本語による最初の最終修了試験 2018年3月 第一号認定校が卒業生を輩出 日本の教育もいよいよ開国前夜でしょうか。この先5年で大きく流れが変わりそうです。
(続く)
ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫
Spring 9月25日号(2013年)掲載