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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 2015年から日本語によるIB導入へ

2013.12.10

2013.12.10
日英二言語教育の始まり
今年に入ってから日本でもIBや国際教育に関する動きが速くなってきました。5月、日本の文部科学省と国際バカロレア機構(IBO)の間で、「2015年から日本語によるIB(国際バカロレア・デュアルランゲージ・ディプロマ…略称日本語DP)を導入する合意に達した」という衝撃的な発表が行われました。 文科省にIBの文書の日本語翻訳をする部署を設置、積極的に支援することや、導入検討校や教育関連機関が参加する連絡協議会を発足(東京学芸大内に事務局設置)させ、日本語DP導入時の様々な問題を協議する体制をとることになりました。従来のDPのカリキュラムでは英語、フランス語、スペイン語の3言語が学習言語と指定されていましたが、初めて非ヨーロッパ語である日本語が指定されます。これによってDPのカリキュラムと一部の科目や各種論文の日本語での学習、作成が可能になります。日英二言語によるエリート教育が本格的に始まることになります。
日本語DP導入の意味・・・日本人学校の生徒も帰国後、日本語DPが有力な選択肢に
現在日本ではDP認定校が16校(うち11校がインター校)ありますが、これらすべてが英語を学習言語にしています。文科省は昨年「2018年までにDP200校導入」というとてつもなく大きな目標を掲げましたが、DPの学習言語が英語であることが目標達成の最大のハードルと言われてきました。しかし、日本語DP導入という大胆な手法をとることで、途端に現実味を帯びてきました。 当初は多くの学校が様子見の構えですが、「グローバリゼーションの波に乗り遅れまいとする」文科省の強い意志と今後予想される教育体制の大きな変化を考えると、多くの私立上位難関進学校や各地域の公立トップ校がDPを導入するのは時間の問題だと思われます。世界標準のカリキュラムの導入を文科省が認め、しかも推進主体の一つになっているという意味は極めて大きいと思います。 日本語DPを採用する上位難関校の学校は当然インター校ではないので、日本在住の生徒を主な対象にした日英二言語での教育になります(少なくとも高校1年からはそうなります)。これらの学校群が、アカデミックな英語力としっかりした日本語力、DPできちんとスコアが取得できるリサーチ型学力(発展的PISA型学力)と旺盛な知的好奇心を持った生徒を選抜するのは当然の帰結といえるでしょう。必然的に入試の内容も変わらざるを得ません。高度なPISA型学力を磨き、バランスのとれた英語力を身につければ、インター生だけでなく海外在住の日本人学校生も日本語DPコース受講の有力な選択肢になるでしょう。
必修6科目のうち3~4科目を日本語で学習できるようになる
DPでは、学習言語にかかわらす決められた6つの領域(第一言語、第二言語、人文・社会分野、自然科学、数学・IT、芸術または選択科目)から各1科目計6科目を学習することが求められています。日本語DPの詳細の決定はこれからですが、英語、数学、物理、地理、芸術は英語で学習することが必須、それ以外は日本語でということになりそうです。第一言語の日本語をいれて3~4教科は日本語で学習可能ということです。TOK(知の理論)やExtended Essayも日本語で学習可能になるので、65%~70%の学習は母語である日本語で可能になります。 ただ、日本在住生徒の英語による学習の負担を考慮するというよりは、政治学、経済学、化学、生物学、心理学等の科目を英語でしかもIBの手法で指導できる教員の確保が難しいという実情が大きいと思われます。
文部科学省とIBOは下記のロードマップを設定しています
日本語IBはことのほか早く実施されます。文科省と国際バカロレア機構(IBO)は下記のロードマップを発表、やる気満々です。  2013年10月 第一回 候補校IBOへの申請提出  2015年2月頃 最初のDP校認定  2015年4月 「最初のDP認定校」に高校1年生が入学  2017年11月 最初の「日本語」による最終修了試験実施  2018年3月 「最初の認定校」から卒業生を輩出 まさに教育も開国前夜です。これからわずか5年で大きく流れが変わりそうです。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2013年12月号(2013年11月20日発行)に掲載された内容です。)