後藤敏夫のグローバル教育情報

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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 英語教育が変わる 下

2012.11.10

2012.11.10
国際的な基準からかけ離れた従来の受験英語
中学校から10年間も英語を学習しているのに日本人が英語ができないのは「受験英語があるからだ」といわれています。これまで多くの大学入試の英語の試験では、細かな文法をチェックする問題、適切な語彙や語形で空所補充する問題、同様の意味を別の表現で書き換えさせる問題、発音問題、文章についた下線部を文法的に正確に訳させる問題など、解答技術を練習しないと高得点が難しいかなりマニアックな問題が出題がされていました。そのため、日本の中学・高校の英語教師は、「生徒たちを大学に合格させる」ためにはこの種の問題で生徒に高得点を取らせるように訓練させなければなりません。その結果、こうした入試のための英語学習を繰り返さざるを得ないことで、世界各国で英語力の基準とされる「『読む』『聞く』『書く』『話す』+『語彙』『文法』の6分野の力がバランスよくついていること」とは程遠い偏った英語力になりがちでした。特に情報の収集能力、発信力が大きな弱点といえます。
大学で英語の資料を読み、英語の論文を書き、英語で発表する力が必須
ところが、グローバリゼーションが急速に進展しつつある現在、ブランド大学を卒業しても英語が使えない人材(受験英語の問題が解けても、英語で仕事ができない人材)は、企業で歓迎されなくなりました。そのような産業界の要請に応え、英語のテキストを使い、論文を英語で書かせた上で発表・プレゼンさせる大学が増えています。英語で授業を行う大学・学科も増えてきています。レベルの高い上位大学ほどこの傾向が強くなっています。 大学での学習手法の変化(学習言語としての英語)に対応するように、上位大学の英語の入試問題は確実に変化しています。東大、慶応義塾大、青山学院大などの大学ではTOEFLやIELTS型の問題にシフトしています。細かな文法を問うような従来型の問題は姿を消し、理系や社会科学系などの教養が必要とされる長文を読ませ、大筋の文意の把握やコメントを求めたり、エッセイを書かせたりする問題が頻出しています。普段からレベルの高い英文を読み慣れていること、様々なテーマに関して議論ができる背景知識と教養があることが合格の条件になります。
英語力の伸長のチャンスを阻害する4科目中学受験
英語学習理論から言うと、10~11歳以前から学習を始めた生徒とそれ以降から始めた生徒とでは伸びが大きく違うのは常識になっています。その証拠に多くの国では英語学習は小学校低~中学年から開始されます。 しかし、せっかく小学3年生くらいから英語学習を始めても、中学受験準備が本格化する5年生(週3回~4回の通塾+週例テストという環境)になる頃には受験勉強との両立ができず、英語学習をやめてしまう生徒が多いのは残念なことです。 海外で生活をする皆さんにとって英語学習と中学受験が両立できる「帰国子女枠受験」を採用する学校が急増しているのは朗報です。一般的には「算数・国語+英語+面接」という、英語学習や現地体験ができ、それを生かせるような配慮がなされています。こうした制度を使って、子どもの英語学習にとって大事な時期に、またとないチャンスを生かせる学習計画・進路方針を立てましょう。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2012年11月号(2012年10月20日発行)に掲載された内容です。)