後藤敏夫のグローバル教育情報

ニュースレター

英語学位プログラム導入が進む非英語圏の大学 - ①スペイン

2021.03.14

スペインの大学の試み

海外非英語圏のキャンパスのグローバル化は一足先に進んでいます。
スペインは、我々日本人には観光地というイメージが強いですが、2000年代初頭以降高等教育(大学・大学院)のグローバル化を急激に推進し、国家の主要基幹産業といわれるまでになっています。スペインは、EUと研究連携協定を結び研究者を受け入れてきました。彼らは各分野で成果を出し、多くの国際企業、研究所やEUの公共セクターで活躍しています。
また、スペインの学生を奨学金とセットでEU各国に留学生として送り出し、逆に各国から留学生を受けいれ、グローバルなキャンパス環境創成に役立てています。こうした取り組みでスペインの大学の評価が上がり、中近東やスペイン語圏中南米の本科学生が増加し、ダイバーシティ(多様性)の高い大学が増えています。

マドリード・カルロス3世大学(UC3M)(スペイン)

QS世界大学ランキング2021において、スペインの大学は100位から300位台まで10大学がランクインされています。筆者が注目するのは、311位にランクインした マドリード・カルロス3世大学(Universidad Carlos III de Madrid )です。
18世紀の啓蒙君主の名を冠したこの大学は、1989年の創立。歴史30年あまりの新鋭国立大学。設立当初からグローバル化を軸に様々な新しい試みを行ってきた大学です。首都マドリード郊外に4キャンパス、学生数約20,000名、7学部を擁する総合大学になりました。全学生の中の約20%が、本科を履修する国外からの留学生です。 スペインの大学のランキングを押し上げているのが、留学生数の増加と英語学位プログラムの種類・数です。専攻の種類だけでなく、教授言語により3種類のコース(英語学位プログラム、英西バイリンガルプログラム、スペイン語学位プログラム)が整備されています。

https://hosting01.uc3m.es/semanal3/documents/FolletoInternacional_en.pd
 

マドリード・カルロス3世大学メインキャンパス開講コース(学士レベル)の教授言語例 

<社会科学系>
・経営管理……英語/スペイン語         ・経済学……英語/スペイン語
・雇用と労使関係……スペイン語のみ       ・映画・TV・メディア……英西バイリンガル/スペイン語
・ファイナンス・経理……英語/スペイン語    ・歴史と政治学……英西バイリンガル
国際関係……英語のみ                             ・ジャーナリズム……英西バイリンガル/スペイン語
・法律学……スペイン語のみ                    ・経営管理とテクノロジー……英語のみ
・情報及びデジタルコンテンツ……スペイン語のみ    ・哲学・政治学及び政治学……英西バイリンガル
・政治学……英西バイリンガル/スペイン語          ・社会学……英西バイリンガル/スペイン語
・統計学とビジネス……スペイン語のみ      ・ツーリズム……スペイン語のみ

<人文学系>
・文化科学……英西バイリンガル         ・人文学……スペイン語のみ

<各種工学系>
航空工学……英語のみ             ・応用数学とコンピュータ……英語のみ
生命工学……英語のみ             ・物理工学……英語のみ
・コンピュータ科学と工学……英語/
英西バイリンガル/スペイン語
データ科学と工学……英語のみ         ・電気力学……英西バイリンガル、スペイン語
・工業電子工学と自動工学……英西バイリンガル、スペイン語
・工業技術工学……英西バイリンガル、スペイン語 ・機械工学……英西バイリンガル、スペイン語
・宇宙通信工学……英西バイリンガル、スペイン語 ・音響映像工学……英西バイリンガル、スペイン語
・通信技術工学……英西バイリンガル、スペイン語
・テレマテックス(移動通信システム)……英西バイリンガル、スペイン語

修士レベルのコースは、大部分が英語学位プログラムになっていることは言うまでもありません。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2021年3月号(2021年2月20日発行)に掲載された内容です。)