『新時代の学びの評価軸』 PISA型教育とは②
2017.06.09
急激に進化するCBT方式のテストが『学びと評価の在り方』を変える
日本の【読解力】の国際順位低下の原因の一つは、PISAが「PISA2015」からCBT(Computer Based Test)方式に変更されたことだと言われています。 ICT(情報通信技術)が急速な発展と遂げ、IOT(Internet of Things-モノのインターネット)が普及、拡大、あらゆる機器・デバイスがネットワークを介してAI(人工知能)に接続され、多様な情報が瞬時に共有されるような時代がもう間近に迫っています。 今後、統計処理とAIによる対話型処理技術を組み合わせると、国内でも従来の「紙と鉛筆による一斉テスト」は、必然的に「ICTを活用した新しい対話型テスト」に急速に移行していきます。AIとICTの活用による近未来のテスト形式を具体的にイメージしてみましょう。まず、文章・統計・数式・グラフ・画像等で表現された設問がコンピュータ画面上に表示されます。受験者はその場で設問を解析、内容、意図を理解し、解答案を構想します。解答に必要な様々なデータをインターネットを駆使してダウンロードし、数値を入れ、設問によっては即時にシミュレーションを行いながら回答することが求められるようになります。 また、出題内容については、既にTOEFLの試験でも行われているように、アルゴリズムを使い『受験者の正誤答次第で次の設問の難易度を自動的に変える』、(結果)評価については、『異なる問題を受験した受験者の成績を比較、統計処理を利用して成績の優劣をつける』ということが行なわれるようになります。一点刻みの評価でなく、評価項目ごとのバンド評価が主流になると思われます。 AIの進化とそれに伴う人間の役割の変化を前提に、ICTにより、テストが随時実施可能な、対話型、検索型の評価ツールとしてすでに変わり始めています。今後こうした傾向に拍車がかかると容易に考えられます。 そのため、学校でのICT教育を早期定着させ、一方で言語技術教育に力を入れて、新しい教育のかたちを実施すること、こうした教育実践を積み上げていくことが、日本の教育に求められます。結果として、新しい学力観に沿った学力が伸長して、自然と国際学力テストPISAにおいて、得点が回復するでしょう。 激変する社会の中で、大きく変わる[評価軸]をしっかり見据え、教育の「在り様」を構想し、スピード感を持って改革していくことが今の日本の教育に強く求められています。学力の国際競争が激化する
2000年以来、PISAの参加国・地域は毎回増加しています。『PISA2015』では世界72の国・地域から約54万人の生徒が参加しています。『PISA2018』では80ケ国・地域の参加が予定されています。 【Education2030】の目指す方向に沿って、教育の「在り様」が大きく変わり、生徒たちの基礎学力(スキル・資質・能力)に関する国際競争が激化しています。今後もこの傾向は、国家による文教政策の国際競争という形で更に激化していくこと予想されます。 日本がこの時流に果敢に教育改革を断行、イニシアティブをもって積極的に推進し、アジアのグローバル教育大国としての独自のポジショニングを確立することをアジアから支援、応援しています。(続く)
この記事は、シンガポールのコミュニティ誌『Singalife』5月11月号から6月2日号に4回にわたり掲載された記事を6回の掲載に再編集したものです。