『新時代の学びの評価軸』 PISA型教育とは①
2017.06.09
世界は今、従来のあらゆる枠組みが音を立てて変化をしています。新たな価値観や急速な技術革新により「社会のありよう」が再編成されつつあり、混沌とした様相を呈しています。その中で求められる学力や知力も急激に変わってきています。今回は新しい時代にむかい「学びの評価軸」がどう変化してきているかを述べます。
新しい『学びのあり方』PISA 方教育とは
人類が経験したことのない上記の大きな変化が起こり、来るべき社会で求められる『学びのあり方』が根本的に問い直されています。 ※OECD(経済開発協力機構)は来るべき近未来2030年の社会・環境に対応する新しい教育の指針を検討するプロジェクト【Education2030】を始動しています。このプロジェクトのいわば基軸としてゴールとなる「学力観」を、国際テストPISA(国際学習到達度調査・・Programme for International ?Student Assessment )に見ることができます。 この国際テストPISAは、15歳の生徒を対象に3年に1回のタイミングで実施され、参加国ごとのデータ・平均スコア・経年変化を公表、国際比較を行います。ここで習得目標とされる新しい学習スキル・資質・能力は、暗記を中心とした『知識の量・正確さ』ではなく、『様々な状況・文脈を解析し判断する力』『意見・論理を正確に表現する力』『複数の回答が想定される設問に答える力』です。このタイプの問題は『PISA型問題』と呼ばれています。国際テストPISAで問われる3つのリテラシー
2000年に初めて実施された『PISA2000』から前回の『PISA2015』を分析すると、一貫して次の『3種類のリテラシー』のテストが行われています。 1.【読解力】書かれたテキストを論理的に理解、まとめ、これにコメントを発し、相手に理解させる能力。 2.【数学的リテラシー】様々な文脈の中で数学的な概念を理解し、これを解釈し、活用する能力。 3.【科学的リテラシー】「現象を科学的に説明する能力」「データと証拠を科学的に解釈する能力」「科学的探究を評価して計画する能力」。特に2015年の科学的リタラシーの分野ではシミュレーションを含む新傾向問題が数多く出題されました。 【数学的リテラシー】【科学的リテラシー】は、理系のみならず文系を含むすべての分野で必要な学力であるとの視点でOECDのPISAは作成されています。 特長は、3つのいずれの分野にも問題解決型問題が多数出題され、将来の大学教育・ビジネスで必須とされるスキルや資質を問うものになっていることです。?日本の成績の推移と読解力の低下
2015年に実施した国際学習到達度調査『PISA2015』の結果が2016年12月5日に発表されました。3年おきに実施されるPISAの学力調査の結果を前回の2012年と直近の2015年を主要3分野、【読解力】【数学的リテラシー】【科学的リテラシー】の国際順位と国別平均点で比較してみましょう。 前回3年前の『PISA2012』と比較して日本は、【数学的リテラシー】は7位→5位、【科学的リテラシー】は4位→2位、と復調していますが、【読解力】は4位→8位と大きく落ち、平均得点は22点も下がりました。文部科学省は、今回CBT(Computer Based Test)方式に変更されたことが一因として解説しています。しかしながら、ベトナムを除く世界各国もCBT方式に切り替えたことを考えると、どの国にとっても同じ条件での変更になりますので、相対的に日本の順位が落ちたことの説明としては不十分と考えられます。 日本のICT(情報通信技術)教育の遅れとリテラシー教育(※言語技術教育)を戦後、正面から取り組んで来なかった結果と筆者は考えます。 ?※言語技術教育:思考を論理的に組み立て,相手が理解できるように分かりやすく表現するスキル教育。子どもの発達に合わせて,系統的,段階的に「聞く・話す・読む・書く」の「言語の四機能」を鍛錬します。(続く)
この記事は、シンガポールのコミュニティ誌『Singalife』5月11月号から6月1日号に4回にわたり掲載された記事を6回の掲載に再編集したものです。