後藤敏夫のグローバル教育情報

ニュースレター

教育のグローバル化競争が本格化する その②

2017.01.15

毎月読んでいただいているこの『Planet News』は、お陰様で何と通算200号を迎えました。第一号は1999年ですから、この時会員の皆さんの大部分はまだこの世に生を受けていなかったことになります。世界にとって大転換点となった嵐のような2016年が終わり、2017年が明けようとしています。

グローバル化に対応する学力養成が将来の活躍の決め手

2000年代になりグローバル化の激流が世界を覆うようになると、各国の教育もグローバル化から無関係ではいられなくなりました。人、モノ、金、情報が飛び交うようになり、各国の教育の目的と質が下記の3点で問われ、熾烈な競争が始まりました。 ①共通のコミュニケーション手法(読む・聞く・書く・話す…ICTを含む)で明確に意思の疎通ができる =Literacy(リテラシー) ②異なった人種・宗教・文化の多様性を尊重・対応できる=Diversity(多様性) ③どこでも住める、働ける=Mobility(可動性) 特に①のリテラシー教育は、国家の考え方とどんなカリキュラムを構築するかで成否が決まってしまうので、国家の役割は重要です。

国際的学力の基準となったPISA(Programme for International Student Assessment)

12月5日、OECDが2015年に実施した国際学力調査PISA2015の結果が発表されました。PISAは3年おきに、数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力の3分野について調査を行っているので、経年変化をみることができます。 PISA国際学力テストにおける日本の成績の推移 前回2012年と比較して日本は、数学的リテラシー:7位→5位、科学的リテラシー:4位→2位、と復調していますが、読解力に関しては4位→8位に落ち、平均得点が22点も下がりました。文部科学省はCBT(Computer Based Test)方式に変更されたことが一因としていますが、ベトナムを除いてすべてCBT方式に切り替えたことを考えると、苦しいコメントと言わざるをえません。 ※PISA(国際学習到達度調査) …Programme for International Student Assessment http://www.oecd.org/pisa/

読解力低下が起こっている??

国立情報学研究所の新井紀子教授は、中高生を対象とした読解力調査を実施していますが、「簡単な文章の主語の読み違い」「『てにをは』等の助詞を正しく理解 できていない」、「語彙が理解できていない」という事例が急増しているそうです。「教科書の文章が理解できていない生徒が多数いて、事態はかなり深刻だ」とコメントしています。実際にその問題例を見てみましょう。 【新井教授調査の問題例】 Alex は男性にも女性にも使われる名前で、女性のAlexandraの愛称であるが、男子のAlexanderの愛称でもある。 問:この文脈において、以下の文中の空欄に当てはまるものを選択肢から選びなさい。 Alexanderの愛称は(  )である。 (1)Alex 38% <正解> (2)Alexander 11% (3)男性 12% (4)女性    39% このレベルの文章が理解できないのでしょうか?? (続く) (本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2017年1月号(2016年12月20日発行)に掲載された内容です。)