2016年という年は世界にとって大きな転換点の年でした。2014年以降、シリア問題に端を発し、EU(欧州連合)に押し寄せる多数の難民。勢いを増す各国の極右政党。一向に解決しないテロリズム。これらの流れは今年に入ってからも、イギリスのEU脱退(Brexit)決定、選挙戦で極端な発言を繰り返したトランプ氏のアメリカ次期大統領当選といった激震となって現れました。これらの国の決定によって世界に大きな衝撃が走り、明らかに潮目が変わったことを感じる状況が起こっています。世界の枠組みを変える出来事であり、激震と混乱はしばらく続くとみられるので注視することが必要です。
グローバリゼーションの流れはどうなる?
20年あまり前、1995年にマイクロソフト社が開発した画期的な基本ソフト「ウインドウズ95」が出荷され、ITとインターネットの急速な展開が開始されました。基本ソフトと素子の急速な小型化が、コンピュータを個人が持つことを可能にし、インターネットが社会の枠組みや産業の構造を根底から変えていきました。 これを機に1990年代の終わりくらいから、「グローバリゼーションの時代」の大波が各国に到来しました。アメリカを主な発信源として、人、モノ、金そして情報が世界中を行きかう時代の到来です。EUはユーロという共通通貨を流通させ、シェンゲン協定によって、域内の往来を自由化して、EU圏を形成して対抗。ASEAN(東南アジア諸国連合)は昨年末AEC(東南アジア経済共同体)へと経済統合を強めていました。 それまでは各地域がそれぞれかなり強い独自性(文化、家族構成、宗教、商習慣、ライフスタイル等)を保持していましたが、グローバルなビジネス、アカデミズム(大学、研究)の世界ではほぼ共通のルール(グローバルルール)と共通語としての英語がそれまで以上に広範囲に普及しました。 今年起こったイギリスのEU脱退(Brexit)とアメリカ等の動きは、「グローバル化で進んだ格差の拡大」に対する反動と言われています。これによって一部の国で外国人への締め付けの強化等の動きが起こる可能性があります。 にもかかわらず、教育のグローバル化の動きに関しては後退するどころか、ますます進展し、各国の熾烈な競争になっています。経済のグローバル化は戻れないレベルまで拡大しているからです。
揺るがない英語の優位と日本語の退潮
様々な分野で共通語としての英語の優位は既に不動のものになっています。 世界で英語を使って仕事をしたり勉強・研究したりしている人口は約18億人と言われています。そのうち母語か第一言語として使っている人口はこの20年くらいは4億人で横ばい。しかし、第二言語として使っている人口は現在約14億人と増え続け、今後も増加しそうです。 残念ながらわが国の国語である日本語が世界共通語となる可能性はほとんどありません。欧米圏を中心に選択外国語科目を、日本語から中国語に切り替える学校が増えています。大変残念なことですが、今後の使用人口が減少する日本語を学習する外国人の数が減っているのは当然の流れです。
今後ますます増える英語による専門科目の授業
非英語圏国の大学・大学院で、授業言語として英語を採用する大学が増えています。ヨーロッパではEU圏のドイツ、オランダ、北欧各国、スイス(非EU)。アジアでは、準英語圏のシンガポール、インド、マレーシア、フィリピンはもちろんのこと、韓国、台湾、香港(特別行政区)、タイ、中近東ではUAE(アラブ首長国連邦)、イスラエル、エジプト等。ようやく日本の大学でも英語で専門科目を実施する大学が増えてきました。 (続く) (本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2016年12月号(2016年11月20日発行)に掲載された内容です。)