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QS世界大学ランキング2015/16 解説記事:ランキングに異変が起こっている①

2015.09.22

QS世界大学ランキング2015/16 解説記事:ランキングに異変が起こっている①

東大の大幅後退<31位⇒39位>と世界的な大学評価の変動

9月15日に待望のQS世界大学ランキング2015-2016が発表されました。今回は前年に増して変動が多く各界に衝撃が走っています。筆者の予測を大きく上回るものでした。

京都大学が日本のナンバーワンにランキング

京都大学は全体ランキングで38位となり、日本のナンバーワンとなりました。一方、東京大学は京都大学の後塵を拝して国内2位にランクされたばかりでなく、全体ランキングも31位から39位に大きく後退しています。大学創立以来自他ともに日本ナンバーワンを認めてきた東大のプレステージを揺るがす衝撃的な事態です。

ただし、京都大学も全体ランキングとしては36位から38位と順位を落としているので、さほど喜べる結果ともいえません。全体的に国内の多くの大学も順位を落としていますので、日本高等教育全体の問題として由々しき事態となっています。

日本の大学ランキングが軒並み後退しているのは、日本の大学が「ローカル型大学」として認知されることが要因として考えられます。参考までに「ローカル型大学」と「グローバル型大学」を分類してみます。

大学比較「ローカル型大学」「グローバル型大学」

大学比較

変わり始めた大学評価基準

今回の総合ランキングと、半年ほど前に発表されたQS専攻分野別ランキングを合わせて見ると明確な傾向が見えてきます。全体的に大学評価の基準が変わってきているように思われます。

授業、リサーチは学術・ビジネスの共通語―英語中心であることと、構成員が多国籍であることは【グローバル型教育】の基本範疇(はんちゅう)として除くと、大まかに次の4点に評価が加重されている傾向が指摘できます。

① 教育・研究環境のグローバル化

世界中から優秀な研究者、教授陣や学生が集まるグローバルな教育・研究環境を整えた大学【グローバル型大学】に転換をとげた大学がますます高くなっていると思われます。

*海外出身の教授陣・研究者と学生の比率の合計はQS社ランキング評価の10%のポイントを占めます。

② 研究・教育の専門性の高さ

レベルの高い専門教育に力を入れている気鋭の専門大学の評価が大きく上がっていること。従来からのプレステージが高い大学への評価が後退気味となっています。つまり、アメリカでもリベラルアーツ系の教養教育が特徴だった名門大学より、専門性の高さと研究の革新性、先鋭さで評価を上げる大学が目立っています。同時に、アジア、ヨーロッパでも同様の専門性の高いコースをもつ大学が軒並み大きくランクを上げています。

つまり、百貨店でいうと名前のプレステージが評価ではなく、デパート内の売り場の専門性、良質な商品揃え、店員の対応や説明の質が評価されているというとわかりやすいかもしれません。

③ 自然科学・工学系が比較優位に立つ

レベルの高い理工系学科・コースを複数擁する大学優位の傾向が高まっているようです。

自然科学・工学系の研究成果のインパクトが論文引用数という形で可視化しやすいことが大きな要因と考えられます。

加えて、大学と国際企業の連携でビックプロジェクトが行われ、資金が投下されやすいことから、連携プロジェクトで高い成果を出せる大学の評価が高くなっています。

④ 論文の引用重視

所属の研究者・教授が作成した論文の引用(専門誌、定期的に出される論文紀要、国際的な学会報告、等)が従来以上に重視されています。

当然、採用される論文引用の使用言語はほとんど英語に限られます。QS社ではScopusという世界最大規模の引用データベースを使用、統計処理によって分野による母集団の引用数の偏りを平準化したうえで評価を行っています。※

※Scopus に登録されている引用論文等の分野別比率は 生命科学分野49%、自然科学分野27%、工学分野17%、社会科学、マネジメント分野6%、人文・芸術分野1%。数で比べると圧倒的に理工系有利。客観的に評価するには平準化が必須となると思われます。

*引用論文数はQS社ランキング評価の20%のポイントを占めます。

(続く)

>QS世界大学ランキング2015/16はこちら。

ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫