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QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:材料科学コース編

2015.08.02

材料科学といわれる分野が大きな注目を浴びています。

今までの素材が持っていない特異な性質をもつ【新素材】といわれる素材の開発と利用が、様々な工学分野を大きく発展させるからです。SD(Sustainable Development)を実現可能とする循環型社会の構築には、環境に負荷をかけない新素材を使った材料が不可欠となるため、それらの新素材を使った材料の開発が広く求められているからです。 軽量で強く、リサイクルしやすい、且つ安価に製造できる材料や製造技術。すなわち、今後のロケットや自動車の材料として期待されている、アルミニウムより軽く鉄より強い炭素繊維プラスチック(CFRP)、様々な用途が期待される各種セラミックス(ファインセラミックス)、コンピューター上に仮想的に鋳物を作る鋳造シミュレーション技術、下水処理や淡水化技術に必須なナノテクノロジーを利用した被膜製造技術、有機化合物を使った有機太陽電池 等、関連分野での開発は拡大の一途をたどっています。 この分野を中心に専門教育で評価が高くユニークな研究・教育環境の大学をいくつか紹介しましょう。

マサチューセッツ工科大学(MIT) 専攻科目別1位 総合1位 

学際的で最先端の応用研究にすこぶる強いご存知MIT。他の多くのUSAの大学と異なり、学部課程から専門科目を深く勉強できます。世界中から集まった最優秀で尖った感性をもつ教授陣や留学生の多さもUSAでは例外的な存在です。 加えて、世界各地のトップレベルの大学や国際企業との連携が強く、人材と資金の両面で豊富なリソースを持った盤石なる体制を長年築き上げています。世界的な専門教育優位の中で、材料科学のような特殊分野でのMITの評価が高いのも頷けます。

インペリアルカレッジロンドン  専攻科目別6位 総合8位

イギリスで尖った専門性、特に理工系分野といえばここをおいてありません。 世界125か国から優秀な学生を集め、教授陣も極めて国際的な環境の中で、革新的で最先端の研究教育活動を行っています。近年、こうした革新的な専門性と開かれた国際性が評価され、大学の世界ランキングで最上位クラスの位置を安定的に確保しています。 材料科学の分野でも多くの気鋭の研究者を集め、Cambridgeとともにイギリスの2大研究教拠点となり、安定的に高い評価を得ています。

ナンヤン工科大学(NTU) 専門科目別8位 総合13位

アジア地域で工学の分野で評価が急上昇しているのがシンガポールのNTUです。 周辺諸国を中心に80ヶ国の学生を集め、アジアでトップレベルの国際性を誇っています。(留学生比率約16%)。NTUは創立25年(1991年)の極めて若い大学ですが、2014年度QS世界ランキングで39位、2015年同アジアランキングで4位は驚異的です。成長の鍵は、シンガポール政府の戦略的サポートをベースに、MIT、Imperial College Londonをはじめとする世界トップレベルの大学やBMWやロールスロイス等グローバル企業との盤石な提携関係を築いていることにあると言えるでしょう。NTUは、国際的なR&D人材※はもとよりアジア周辺国で発展する様々な製造業の上級エンジニアやマネジメント人材の養成拠点として自らを位置づけて、更なる躍進を目指しています。 ※R&D人材*研究開発特に応用科学の研究開発評価を行う専門性の高い人材

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich) 専攻科目別15位 総合9位

スイス連邦工科大学チューリッヒ校はヨーロッパ圏の理工系研究教育の中心の一つです。国際都市チューリッヒには数多くのグローバル企業の本部があります。ETHチューリッヒ校は、これらの多くの企業や公共セクターと提携関係をもち、基礎研究から応用研究まで幅広い分野の研究教育が共同で行われています。 教授陣の約70%は国外から招聘、高い留学生比率と合わせ、Diversity(多様性)という点では、世界でも数少ない贅沢な勉学環境と言えるでしょう。 ここでは、材料科学の分野はすべての工学系分野の基礎学問であるとの認識のもと、非常に力を入れているため、多くの隣接分野との学際研究が盛んです。 尚、チューリッヒがドイツ語圏であるので学士レベルの授業は基本的にドイツ語ですが、大学院修士課程以上の授業は概ね英語で行われます。

東京工業大学 専門分野21位 総合56位

海外ではTokyo Tech と言われる東京工業大学は極めて高い専門性と世界トップレベルの研究で知られています。導電性プラスチックの発見でノーベル化学賞を受賞した白川秀樹博士の出身大学です。東工大はアジアのTOP大学との連携を重視、清華大学(中国)KAIST(韓国)香港科技大学、台湾大学ともDual Degreeをはじめとする連携が進んでいます。

東北大学 専門分野31位 総合71位

 基礎工学から応用工学までの先端技術研究で有名な東北大学ですが、特に材料科学総合学科は40以上の分野の研究室群があり、金属材料、半導体、ファインセラミックス、高分子材料まで様々な材料の開発、環境負荷を軽減する材料の製法研究、高強度・高耐久性の新接合技術の研究、極低温、宇宙環境等の特殊な環境向けの性質の異なる材料の複合化まで、最先端研究に深く取り組んでいます。研究者数、学生数等日本国内最大規模のコースです。学部レベルからの英語による授業、多数の外国人研究者の招聘等研究・教育のグローバル化が急速に進み今後が楽しみです。

材料科学修正

(続く)次回は土木工学【Civil & Structural Engineering】を取り上げます。 ※「QSグローバル大学世界ランキング2015 解説記事:材料科学コース編」は、世界大学評価機関「Quacquarelli Symonds(QS)」が公表している「QS World University Rankings by Subject 2015」のデータに基づいて、記事作成、編集しています。 >QS世界大学ランキング2015/16はこちら。 ワールドクリエィティブエデュケーション CEO オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫