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QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:開発学コース編

2015.07.27

開発学は社会科学の中でも比較的新しい分野です。

研究が本格化したのは、アジア・アフリカ諸国が独立し、様々な問題が顕在化した1960代以降と言われています。 
近年、経済成長が目覚ましいこれらの地域では、港湾、高速鉄道、高速道路網等のインフラ建設、水資源の開発、持続可能な開発(SD: Sustainable Development)のための多数のプロジェクトが進んでいます。そのため、それらの継続的な開発を可能にする環境技術への要望が高まっています。それらのプロジェクトを支えるためには、膨大な資金需要と国際的な援助システムもまた必要となっています。また、貧困層の経済的自立を支えるマイクロクレジット※への注目も高く、周辺では研究すべきテーマが更に拡大の一途をたどっています。
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB・・・Asian Infrastructure Investment Bank)の話題も注視されていますが、ここでは各開発事業への利権も含め、一国家の事業推進や利益追求に収まらないグローバルな事業推進、事業展開が必要となっています。
つまり、経済学的側面のみならず、公共政策、社会政策、農業政策、教育政策等、幅広い分野のからの学際的アプローチやプロジェクト参加・関与が必要とされます・そのため、対象地域の実情を理解するスペシャリストの養成が急務となっています。

※マイクロクレジット:絶対的貧困層や女性など、通常の金融機関からは融資を受けにくい人々を対象とした小口融資制度

こうした第三世界の開発が活況となる中、開発のスペシャリスト養成のための開発学の分野は今後、大きな伸びが期待できる分野といえるでしょう。
この分野では、植民地開発の長い歴史と実績をもつイギリスと英連邦諸国の大学が細分化された分野の中でそれぞれの強みを発揮しています。

サセックス大学 専攻科目別1位 総合187位 

ロンドンの郊外ブライトンに位置するサセックス大学は、国際関係、環境開発学、社会開発学、紛争解決研究、移民学から気候変動開発学まで世界最先端の開発学の研究教育機関として、高い評価を得ています。研究職はもちろんのこと、世界銀行、国際通貨機関、国連、EU本部等の国際機関、世界各国の政府機関、国際NGO等 に多くの本学出身者がいて極めて有効なキャリアパスになっています。130か国出身、30%を超える国際学生というDiversityの高さがその質の高さを物語っています。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)  専攻科目別5位 総合35位

開発経済学、国際援助・借款、インフラ開発、貧困と開発 等経済学と開発の関連した分野では何と言ってもイギリス経済学の雄ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)です。世界中からこの分野の優秀な研究者を集め、極めて先鋭的な研究が行われています。

ケープタウン大学(UCT) 専門科目別 7位 総合171位

アフリカの開発学といえばこの大学。開発独裁型の国家が多いアフリカの中で南アフリカの大学特にケープタウン大学は極めて高い教育水準と、アパルトヘイトに抗議してきたリベラルな学風で知られています。Diversityも高く、アフリカ全土、ヨーロッパからの留学生が多いことが特徴的。開発経済学と無論のこと社会開発学、環境保全と開発等の分野が極めて強いと定評となってきています。

オーストラリア国立大学(ANU) 専攻科目別10位 総合19位

南半球の開発学の研究・教育の中心的存在。特にアジア・太平洋島嶼諸国・中近東の地域研究と開発経済学、社会開発学、環境マネジメント、気候変動開発学等の分野に抜群の強みを発揮します。

ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS,The School of Oriental & African Studies) 専門分野13位 総合275位

SOASはアジア、アフリカ、中近東に至る世界各地の地域研究と開発学、イスラム法、仏教研究、移民学、紛争解決研究 等地域の特性と開発に取り組んでいて、この分野では他の追従を許しません。約40%の留学生の中には多数の研究対象地域の学生が多数学んでいて、贅沢な勉学環境といえます。

開発学修正

(続く)次回は材料科学【Materials Science】を取り上げます。

※「QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:開発学コース編」は、世界大学評価機関「Quacquarelli Symonds(QS)」が公表している「QS World University Rankings by Subject 2015」のデータに基づいて、記事作成、編集しています。

>QS世界大学ランキング2015/16はこちら。

ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫