子供たちが成人する10年後の社会・企業を見据え教育を考える
何とかなるのかアジア最低レベルの英語力
前回、国際バカロレア・デュアルランゲージ・ディプロマ(略称日本語DP)によって日英2言語による教育が実質解禁になったことをお伝えしました。しかし、現状の日本人学生の英語力は、「英語による教科教育」を行うには極めて低いレベルだといわれています(上位難関大卒者でも一部を除き、彼らの英語運用能力はかなり低いと言わざる
をえません)。
一方、アジアの多くの国では、「学問・ビジネスで問題ない英語力がある」ことが大卒者の前提条件の一つになっています。日本人の英語力は、国際比較するとどの程度なのでしょうか?非英語圏の多くの大学生・大学院生が受験するTOEFLの平均スコアとその推移の比較をしてみると、深刻な事態が見えてきます。
コンピュターベースの試験― IBTが開始された2005年から2007、2009、2010、2012の5ヵ年のアジア主要14ヵ国の受験者平均スコアと推移(伸び)を比較してみました。平均スコアから概ね下記の3グループに分かれます。
第1グループはイギリス、アメリカの旧植民地であり、独立後、英語が公用語として広く使われてきました。高等教育の教授言語としても使われてきたため英語力は高く、90以上のスコアを取得できるのは教育制度から言っても当然の結果です。
第2グループでは英語以外の母語が共通語であり、教育もその言語で行われてきました。しかしグローバル化が急速に進んだ2000年以降、競うように英語の運用力アップを目指してきました。平均スコアが80前後という結果は、賞賛すべきです。特に、韓国、ベトナム、台湾等は高等教育を英語で受けることを可能にする英語教育を開始し、目ざましい成果を上げています。
資料でお分かりのように、日本の英語運用力は問題外の最低レベルであり、第3グループに属します。この7年間に改善されつつありますが、グローバルなビジネスを先導し研究分野でもTOPレベルの先進国と言うには難いでしょう。
高学歴化と英語使用人口の増加
グローバル化が進む中で、特にアジア諸国の成長地域の「中間層」が大幅に増えています。中国、香港、台湾、韓国、インド、インドネシア、タイ、ベトナム、シンガポール、2020年のわずか10年間で3万5千米ドル以上の所得のある上位中間層が11.1%から34.3%、何と約3倍に増えると予想され(Euro monitor 推計)、この層の子弟が確実に高学歴化しています。
アジア地域を中心に、経済成長の大きい各国から教育先進国への留学生も大幅に増えています。
これは非英語圏高学歴の人々の英語力が今後も更に向上することを意味します。彼らは英語を共通語として当たり前に操り、英語による大学の授業に参加し、卒業後はいわゆる「グローバル人材」として日本人の手ごわいライバルとして立ちはだかるでしょう。(続く)
ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫
Spring 3月25日(2014年)号掲載