後藤敏夫のグローバル教育情報

ニュースレター

『日本の大学が変わる?!③』

2011.10.20

入試が変わる…入学時の学力ではなく入学後の意欲と成績が勝負
グローバリゼーションの大波が押し寄せて、時代が大きく変わるにつれて、大学の入学基準も大きく変わってきています。 大手予備校の幹部K氏が語ります。「あと10年もすると大学入試の形は一変するでしょう。センター入試も今の形ではなくなりそうですし。難関大学ではTOEFLで一定以上のスコアを取得した者には英語の試験免除の優遇を与える方式などが出てくるでしょう。」 最近顕著になっている問題は「ペーパー試験の得点と入学後の勉学意欲・成績が一致しないこと」。これは多くの大学教授たちにとっての頭痛の種です。入試のハードルは高いが、一旦入学してしまえば楽に卒業できるレジャーランドのような大学の仕組み。加えて多くの学生が、自らのやりたいことや目的ではなく、模擬試験の成績と偏差値で大学・学部・学科を選ぶ傾向にあることが主な原因です。本来は「数学・理科が得意で成績が良いから理系」ではなくて「理系の分野を専攻したいから、数学・理科は頑張って勉強しなければならない」であるべきですね。中には「英語が苦手だから理系学部を受験した」なんていうとんでもない選択をする学生も多くなっています。 大学卒業生の評価軸は、卒業した大学の相対的な格付け評価(偏差値ランキング)ではなく、「実際にどんな研究・勉強をどれだけ頑張ったか?」に大きく転換しつつあります。「ともかく一流大学に入学すれば就職も安泰」という時代はすでに終わっています。偏差値の高い難関大学に入学しても、自分のやりたいことが不明確で目的意識の薄弱な学生の将来は暗いと言わざるを得ません(実際、就職活動で早慶等の難関大学卒業で内定ゼロの学生が続出しています)。  
AO入試で入った学生は学力が低いのか?
こうした事態を打開するために近年、海外の大学に倣いAO入試(アドミッション・オフィス入試)や自己推薦入試が拡大しました。今では3分の1の学生がこれらの方式で入学した学生だといわれています。ところが、「現在の日本のAO入試では学力の低い学生が入学してくる」とマスコミの槍玉にあがってしまいました。これは日本の大学のアドミッション・オフィスが書類から学生の学力や潜在能力・勉学意欲を読み取れていないことと、入学してほしい学生像を明確にせず、安易な学生確保を目的に行う傾向があるからです。 しかし世界の大学の主流はAO入試です。世界の各大学は手間と費用をかけて優秀で勉学意欲の高い学生を必死に探しています。海外のトップレベルの大学にはIB(国際バカロレア)等の国際的に認知されたカリキュラムでの履修科目と高いスコアを基本にして、社会的活動歴を加味して判断するところも少なくありません。日本の大学のアドミッション・オフィスは更なる研究をするべきでしょう。  
高校時代の意欲と成果を評価する
日本の優秀な高校生は難しい問題を解くことで難関大学に合格してきました。一方で、海外の優秀な高校生の場合、IBやアメリカのAPのように大学レベルの科目を高校で履修し(日本風にいえば飛び級)、その成績が大学入学時の選考に大きく左右されます。必然的に大学は優秀な学生であれば16歳でも受け入れます。IBやAP等大学レベルのクラスでの好成績取得者には単位免除・奨学金付与が一般的になっています。 【入試という一発勝負のふるい…中国の科挙のような選考】ではなく【高校時代の意欲と成果で判断する】という考え方は入学選考に関する世界的な標準になっています。日本の文部科学省もようやくガラパゴス的な制度を変える動きを水面下で始めました。大学入試のあり方が急速に変わることは間違いありません。

(続く)

ワールドクリエィティブエデュケーション CEO オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫
   
オービットアカデミックセンター会員情報誌「プラネットニュース」2011年10月20号掲載