年頭のご挨拶と後藤敏夫の注目の大学③ ~東北大学~
2026.01.09
年頭のご挨拶
謹賀新年
旧年中もお引き立てをいただき誠にありがとうございます。
皆様のますますのご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
本年も引き続き研鑽を積んでまいります。
更なるご高配を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
2026年元旦
後藤敏夫
オービットアカデミックセンター 代表
ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
後藤敏夫の注目の大学③~東北大学~
日本の科学、技術分野の歴代の研究者が、凡人の想像を超えたたゆまない基礎研究に注力しながら、数々の成果や発見を繰り返して次世代につなげてきたことが、ノーベル賞をはじめ、数々の世界的アワードに評価され続けてきました。ナノ単位での可能性を探求して、研究、実験を連綿と繰り返し、同じテーマに長く向き合ってきたからこその科学力、技術力です。社会がどんな変貌や発展を遂げても、この科学の研究の本質は時代を超えて変わりがありません。様々なAIをはじめとしたテクノロジーの発展が加速し、変化が著しい昨今ですが、社会を支え、革新のきっかけとなるこのひたむきな研究姿勢こそが、日本の最大の強みです。そうした強みを活かした研究・教育機関のひとつである東北大学(以下、東北大)を今回取り上げます。
東北大のプロフィール
• 1907年「東北帝国大学」として創立
• 国立・総合大学
• 4つキャンパス(いずれも仙台市内)
• 10学部、15大学院、3専門職大学院、6附置研究所

• 2025年5月1日付 統計
合計生徒数:17,975人 うち外国人留学生:2,147名(94ヵ国)
学部学生:10,733人
大学院学生(修士・前期・専門職、後期・博士):7242人
教員数:3,042人
• QS World University Ranking 2026 109位(国内5位)
同ランキング 東大36位、京大 57位
*1*2*3*4
長きにわたり一流の研究力を誇る
かのアインシュタインも1922年に東北大を訪れた際、「仙台は学術研究に最も向いた都市であり、東北大学は恐るべき競争相手」と述べたという有名な一連の逸話があります。アインシュタインは、光量子仮説に基づく光電効果の理論的解明で 1921 年のノーベル物理学賞を受賞していますが、受賞の連絡を日本へ向かう船の上で受けたとか。*1*5*6
東北大の研究者たちは人間社会の数々の革新の誘因となる重要な発見、開発を多数しています。以下に一部を紹介します。
• 1924年 アンテナの発明 八木秀次教授と宇田新太郎教授
• 1957年 半導体レーザー考案 西澤潤一 元総長、名誉教授
• 1984年 半導体不揮発性メモリー「フラッシュメモリー」の技術発表 舛岡富士雄名誉教授
*7*8*9
こうした研究や開発を下支えしている東北大工学部の卒業生として、田中耕一さんもよく知られています。2002年にソフトレーザー脱離イオン化法(SLD)の開発によりノーベル化学賞受賞ノーベル化学賞を受賞しました。(東北大学工学部電気工学科卒、卒業論文「損失性媒質とダイポールアレイの組み合わせによる平面波の吸収」、島津製作所勤務)東北大のDNAを感じます。*10
こうした背景の中、東北大は、2024年に文部科学省から「国際卓越研究大学」の最初の大学に認定されました。この国際卓越研究大学制度※は10兆円規模のファンド(基金)の運用益によって、国際的に認知されている最先端の研究を支援するものです。昨年2025年に東北大は国から154億円もの助成金を支給されています。*11
※ 「国際卓越研究大学」2校目として、東京科学大学(2024年10月に東京工業大と東京医科歯科大が統合してできた国立大学)の医工連携を推進する計画が期待され、2025年12月に認定された。京都大学も認定3校目として続く見込み。*12
当職が東北大に注目するのも歴代継承されてきたこの一流の研究力や開発力です。東北大は、材料科学、スピントロ二クス、未来型医療、と災害科学、この4つの研究分野を強みとして前面に打ち出しています。*13
今回は材料科学と未来型医療についてご紹介します。
材料科学
東北大では数学の分野とコラボレーションした材料科学の最先端の研究が材料科学高等研究所 Advanced Institute for Materials Research(以下、AIMR)にて行われています。AIMRは2007年に文部科学省のプロジェクトWPI(「世界トップレベル研究拠点プログラム」 World Premier International Research Center Initiative )の5つの拠点の1つとして設立されました。AIMRには世界中から優秀な研究者が集まり、国内と海外の企業や研究機関と様々な研究プロジェクトを行っています。外国人の研究者は全体の50%以上を占めているようです。*13*14*15
ここでは、ジョイントリサーチセンターとしてケンブリッジ大学(英国)、シカゴ大学(米国)、清華大学(中国)とスイス連邦材料科学技術研究所 Empa (スイス)と名だたる大学と提携した研究が行われています。*16
2025年12月に発表されたバッテリーに関連する研究成果の2つをご紹介します。1つ目は、出力と安全性を高め、そして、より長持ちさせることが可能となるバッテリーの炭素系の素材の製造方法を開発しました。この技術開発にて、電気自動車の安全性や電気製品のサステイナビリティを高め、信頼性のより高い再生可能エネルギーの貯蔵が可能な次世代バッテリーの開発が期待されています。2つ目は、東京大学と東京科学大学との共同研究で電池材料の中で起こる「協奏的なイオン輸送」を世界初可視化と解析することに成功しました。今まで、この複雑な協奏的輸送の実態は明らかにされていませんでしたが、この発見により、電池の性能の向上、および、次世代の固体電解質(全個体電池の材料)の開発が大いに期待されています。*17*18
未来型医療
2018年に設立した東北大学未来型医療創成センター(Tohoku University Advanced Research Center for Innovations in Next-Generation Medicine:INGEM)に東北大の11の部局が協力し、未来型医療拠点の構築を目指しています。患者一人ひとりの異なる遺伝子・体質を考慮した個別化医療・個別化予防を中心とした未来型医療へとつながる基礎研究、臨床応用研究を行い、個別化医療・予防の実践を目指しています。INGEMに参画している局部は以下の通りです。
• 東北メディカル・メガバンク機構(Tohoku Medical Megabank Organization: ToMMo)(2012年設立) 世界有数の複合バイオバンク
• 東北大学病院
• 東北大学大学院 :医学系研究科、歯学研究科、薬学研究科、工学研究科、情報科学研究科、生命科学研究科、 医工学研究科、加齢医学研究所、多元物質科学研究所
*19*20*21
最近の研究成果の例として、日本人に多く見られるCYP2E1遺伝子多型の由来となる25種のバリアント酵素の包括的機能解析に成功しています。CYP2E1はアルコール、麻酔薬、発がん物質前駆体を代謝する肝臓に多くみられる酵素で、肝毒性や薬物の副作用の発症にも関わっているとされています。この発見は、日本人の薬物代謝活性の個人差を理解し、より安全で効果的な薬物治療の個別最適化につながる発見です。*22
東北大への進学の薦め
東北大学は数々の重要な発見や開発を世に送りだし、現在でも先端的研究が意欲的に行われている研究型大学です。医療系、災害科学系、材料科学系の最先端の研究に携わりたい人は、東北大と東北大の大学院を選択肢として加えてみるのはいかがでしょうか?現在進行中で最新の研究に取り組んでいる教員が指導者としていますし、理論から実践まで整った申し分ない環境だと思います。東北大の帰国生入試について今回触れませんでしたが、後日取り上げる予定です。
2026年1月 元旦
後藤敏夫
オービットアカデミックセンター 代表
ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
脚注
*1 東北大学(n.d.), 歴史的背景, 国立大学法人 東北大学.*2 東北大学(n.d.), 東北大学の概要, 国立大学法人 東北大学.
*3 東北大学(n.d.), アクセスマップ, 国立大学法人 東北大学.
*4 QS Top Universities (n.d), QS World University Rankings 2026: Top global universities, QS Quacquarelli Symonds Limited.
*5 大隅典子(2025年3月26日), 社会とともにある大学 東北大学副学長・大隅典子, 日本経済新聞.
*6 東北大学機関リポジトリTour(2015年3月)、展示記録 企画展「東北大学とノーベル賞」,東北大学史料館紀要10号.
*7 東北大学(2024年2月20日.), 八木・宇田アンテナ発明100周年記念フォーラム(4/14開催), 国立大学法人 東北大学.
*8 西澤潤一(2010年7月)、光通信五十周年、学士会アーカイブス、一般社団法人学士会.
*9 Science Portal (2018.11.26),フラッシュメモリーを発明した舛岡博士に本田賞授与 世界に普及しスマートフォンなど幅広く活用,Science Portal.
*10 学びの杜(2025年2月3日)、#09 研究者・田中耕一さんに聞く学際融合がもたらすブレイクスルー、東北大学総務企画部広報室.
*11 文部科学省(2024年12月24日),東北大学の国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可等について,文部科学省.
*12 Science Portal (2025年12月24日), 国際卓越研究大学、2校目に東京科学大 京大も候補、東大は継続審査, Science Portal.
*13 東北大学 (n.d.)、世界トップレベル研究拠点, 東北大学.
*14 AIMR(n.d.), 「材料科学」に「数学」の視点を導入したAIMRの挑戦, 東北大学.
*15 文部科学省(n.d.), 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPIプログラム)の進捗状況について , 世界トップレベル研究拠点プログラム委員会, 文部科学省.
*16 AIMR (n.d.), 概要Overview, 東北大学.
*17 AIMR (2025年12月24日), Breakthrough in Carbon-Based Battery Materials Improves Safety, Durability, and Power,東北大学.
*18 AIMR (2025年12月17日), 電池材料の「協奏的なイオン輸送」を可視化する新理論を開発, 東北大学.
*19 INGEM (n.d.), 概要, 東北大学未来型医療創成センター.
*20 東北大学個別化医療センター(n.d.), 個別化医療とは?, 東北大学個別化医療センター.
*21 東北メディカルメガバンク (n.d.), 背景と経緯, 東北メディカルメガバンク.
*22 INGEM (2025年10月16日), 【プレスリリース】日本人CYP2E1遺伝子多型の網羅的機能解析に成功 ~薬物代謝の個人差解明と個別化医療への応用に期待~,INGEM.
