後藤敏夫のグローバル教育情報

ニュースレター

ポストパンデミック時代のグローバルコンピテンシー

2022.12.25

改めて問われるグローバルコンピテンシー

Covid-19 は3年もの間、困難とその克服の時代の陥穽(かんせい)へと人類社会を追い立ててきました。広範囲な疫病蔓延にともなって未曾有の歴史的な転換期を迎えています。その問題解決の糸口は今なお行先不明、不安に嘖(さいな)まれた現代社会では数々の事件が起きています。中でも、パンデミックによりグローバルコンピテンシーの逆行とも言える、他者との「対話」を拒む傾向や「対話」が失われたことによる分断や対立がクローズアップされています。

パンデミックは「移動の自由」と「移動技術の高度化」の産物でありましたが、「移動技術の高度化」によってかえって「移動の自由」を奪われるという皮肉な因果関係を作り出しました。もっとも人間はパンデミックを克服してそれを取り戻すための努力を惜しまず未来に向かっていますが、一方では、パンデミックはかけがえのない個人や人間関係を失いかねない対話の脆弱性を生み、結果、未来への不安が顕在化して、その不安が新たなる社会問題へと向かわせています。

その不安がもたらす社会問題には、ネット社会の情報の氾濫がコロナ前より更に狂暴化していることが一因としてあります。情報の洪水の中で気が付くと大きな流れに飲み込まれて、結果、自らの意志とは関係なく、ある意図やビックデータから導かれる情報が過度に与えられています。つまり、私たちが本当に知るべき正しい情報に目が届かなるという危険性が懸念される状況です。まさに、IB(International  Baccalaureate)をはじめとするPISA型教育の中で繰り返し訓練される 「情報を取捨選択する」リテラシーの必要性が高まっています。

弊社の教室部門オービットでは、PISA型学力観に対応した言語技術の指導を実践するにあたり、「事実の叙述」と「意見の叙述」を判別する指導を長年していますが、その情報を選別するコンピテンシー(能力)がこの混迷の中で、更に求められています。

 

デジタル技術とネットワークが生み出す「リモートでの知的空間」

一方で、パンデミックの中で、デジタル技術とネットワークによる新たな関係性のありかたをもたらしました。「リアルな対話の場」が人と人とじかに出会う「空間」だけでなく、ネットワーク空間がつくり出す「対話の空間」が大きな割合を占めるようになったのです。今までの仮想空間(バーチャルリアリティ)とは一線を画して、このネットワーク空間は実体をともなう「対話の空間」として機能しています。

オービットでも、対面授業とオンラインによるリモート授業を組み合わせて生徒ひとりひとりに適切な受講のかたちを提供しています。それは対面とリモート、加えてハイブリッド対応により、より柔軟に効果的な「学びの空間」や「知的対話の空間」を実現し続けるためです。

特にオンラインによるリモート授業では、生徒たちの対話(コミュニケーション)スキルは格段に伸びていると感じています。「対面」でない制限された空間でも、「一対一(生徒ひとりと教師ひとり)」ばかりでなく、「一対多(個からクラス全体へ)」への発言やインタラクティブスキルが求められるからです。

オービットは1990年の開校以来、「対話」と「思考」、「試行」と「実践」を標榜してPISA 型教育に取り組んでまいりました。ポストパンデミックは、リモート空間の場を更に効果的な知的な実践の場として加え、国際人を育成する海外塾としての新たな知的空間の試みに真摯に取り組んでいます。まさに、新しい時代に向けて、私たちの教育理念の実践とその成果が再び問われる時代となっています。

2023年もまた、ワールドクリエイティブエデュケーショングループは、シンガポールを起点に国際舞台で活躍できる人材養成をめざして、知の探究を発展的に継続し、海外教育の最新情報を発信してまいります。皆さまの更なるご高配を賜りますようお願い申し上げます。