後藤敏夫のグローバル教育情報

ニュースレター

ニューノーマルと『包摂』の時代に

2021.12.22

近未来の教育のあり方

  COVID-19のニューノーマルの中で、『社会的包摂の時代』が加速しています。この社会の変化の中で、今、筆者は「近未来の教育のあり方」についての構想が次々に膨らんでいます。   例えば、地球温暖化だけをみても、さまざまな分野への派生的影響は凄まじく、コペルニクス的転換が求められていると言えます。また、日本の教育においては、PISA(Programme for International Student Assessment)型の観点で言うと、未来のゴール達成にむけて、生涯持続する「探究のサイクル」*の思考力を涵養することが最優先課題と考えています。言い換えると、「未知」のものを想像し、或いは、創造し、表現(言語化、数式化、ビジュアル化)していく「抽象思考を鍛える」ことが、ポストコロナの時代に活躍する子どもたちに求められる学習スキルです。この「抽象思考を鍛える」=Abstract Learning (抽象表現教育)については順次述べていきます。

多様化と社会的包摂

  時代は、国際社会の『多様化-Diversity』が『社会的包摂-Social Inclusion』の社会を浮き彫りにしています。『社会的包摂』とは、多国籍社会の中で、「全体を包み込むこと」、つまり、様々な言語、文化、教育などのバックグラウンドを持つ人々、また、社会的弱者と呼ばれる個人や集団が社会に参画する機会を持つこと、を意味します。『差別的排除』の対岸にある考え方です。ここでいう「社会」とは、地域社会から国際社会までその単位は様々です。同質的な社会を長く標榜(ひょうぼう)してきた日本社会において、同質的な圧力に負けないで、個性を堂々と表現できる、主張しても「浮かない」価値観を共有できる「場」や社会の必要性を筆者が長く説きながら、自ら率いる教育現場で実践していることをご周知の方も多いことと思います。

  日本においても、平成30年版 『厚生労働白書 第4章. 包摂と多様性がもたらす持続的な社会の発展に向けて』の中に、『包摂』の取り組みとして、労働参加率の向上を図ることが重要課題として書かれています。「2020年パラリンピック」もまた、「社会的包摂」を牽引する一大イベントであり、また、最近の各種集団訴訟への和解的アプローチもこの一環であるといえるでしょう。その一方で、社会的弱者に向けた事件が起こるたび、教育の役割を強く感じます。

  2022年はこの『Abstract Learning (抽象表現教育)』と『包摂の時代』をテーマに加えて『後藤敏夫のグローバル教育情報』を発信していきます。よいお年をお迎えください。Stay safe.  

*「探究のサイクル」:  
2024年より『理数探究』が文部科学省実施の共通テストの一科目に採用される予定
2021年12月22日
後藤敏夫