後藤敏夫のグローバル教育情報

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「英語民間試験導入」延期される 萩生田文部科学大臣の発表で教育改革は後退してしまうのか

2020.04.14

教育改革の大きなテーマ、大学入試改革の一つ「大学入学共通テスト」の導入でつまずいてしまいました。

(1)入試改革の目玉の一つ……「英語民間試験導入」が延期される!

2019年11月1日萩生田文部科学大臣は、数年来の方針を急転換して、英語民間試験活用を延長することを発表し、大きな衝撃が走りました。「50万人以上が受験する大学入学共通テストの実施方法」という極めて技術的な問題を政治的に解決したというべき、後味の悪い結末になってしまいました。昨年11月のこの発表は、発端の一つである日本の遅れた英語教育を、さらに4~5年遅れさせることになりそうです。

英語民間試験活用の経緯と目的……国際共通語『英語運用力』の基準は、国際認知度の高いテストであるべき

英語民間試験導入検討の大きなきっかけになったのは、日本人の学生が入試における1点の得点に汲々とし、肝心のアカデミック英語・ビジネス英語の運用力がなかなか上昇せず、アジアにおける英語力最低レベルを脱却できないことでした。中1~高3まで6年間の受験英語教育(=将来につながらない分断教育)が、国際共通語=英語を使いこなせない大学生の量産という負の結果を生んでしまったのです。(2000年代以降、アジア各国の難関大学アドミッション時の英語運用能力のチェックは、国際認知度の高いTOEFL、IELTS等の利用が一般的になりました。) 日本においても遅まきながら、2014年12月22日、中央教育審議会が、「大学入試センター試験」の次世代のナショナルテストである「大学入学共通テスト」の在り方を答申。その中に英語民間試験の活用が明記され、今回の大学入試改革の主要な焦点の一つとなり、大きな話題を呼びました。 アカデミック英語の運用能力が高い帰国生、海外修学経験の豊かな生徒、外国人は、国際認知度とレベルの高い3つのテスト(TOEFL iBT 、IELTS、ケンブリッジ英語検定)から選択受験。主に国内で勉強し、英語力が基礎レベルの生徒は、国内で作られた4つのテスト(英検、GTEC、TEAP、TEAP CBT)から選択受験するシナリオになっていました。【大学入学共通テストの英語科テスト】と【7つの民間英語試験】を4年間は並行実施し、2024年からは共通テスト英語科テストを廃止。文部科学省が認定した7つの民間英語試験で遂行するという、ロードマップとゴールが明確な制度設計でした。 英語民間試験活用の延期となると、急ぎ様々な仕切り直しが行われるようです。【大学入学共通テストの英語科テスト】がどのような問題になるのか? 旧センター試験とは異なる新しいテストを作らざるを得ません。 プラネット4月号

増加する私立大学民間英語試験利用 ※2020年2月号(vol.237)立教大学の項参照。

大学入学共通テストの英語民間試験の活用延期になったとしても、難関私立大学の英語民間試験利用者は今後大きく増加すると思われます。特にTOEFLやIELTSで高いスコアを獲得した英語運能力のある生徒は、国際認知度の高いこれらのテストを何回も受験し、より高いスコアを目指すからです。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2020年4月号(2020年3月20日発行)に掲載された内容です。