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宇宙観を変えるノーベル物理学賞の発見①

2019.12.15

本年のノーベル物理学賞は、2つの画期的な発見に対して、3人の研究者に授与されました。そのうち「系外惑星」(※1)の存在を確認、証明したミシェル・マイヨール(Michel Mayor)名誉教授とディディエ・ケロー(Didier Queloz)教授は、個人的にも極めて印象深い二人の天文学者です。 筆者は、学生時代から無類のSF好き。天文学、物理学、化学等も好きな分野でした。アメリカのアポロ11号が月着陸に成功したのが、1969年7月21日。人類が歴史上はじめて地球以外の天体に到達した瞬間でした。(当時中学生だった筆者は、この世紀の大プロジェクトをテレビ生中継で見て強い衝撃と感動を覚えたことを、昨日のことのように覚えています。)

スター・ウォーズにも出てきた系外惑星

1977年、ジョージ・ルーカスは銀河系を舞台にしたSF映画「スター・ウォーズ」を公開。空前の大ヒットとなりました。当時の最先端の特撮技術を随所に駆使して制作されたこのシリーズでは、多くの系外惑星のシーンが撮影されました。個人的には(系外)惑星タトゥイーン(主人公ルーク・スカイウォーカーの故郷)から見る、色の異なる二重星系(2個の恒星を中心に構成される星系)は、息をのむ光景でした。

当時、現実の世界ではまだ「系外惑星」は発見されていませんでした。多くの科学解説書には、太陽から最も近い恒星、ケンタウルス座アルファ星までの距離は約4.3光年(約40兆8500万キロメートル)。肉眼で見える多くの恒星は、数十~数千光年という途方もない遠距離。しかも自ら光を出さないため発見するのは極めて難しいと言われていました。事実、世界中の天文学者たちの系外惑星探索は、1940年代後半に開始されましたが、約半世紀たっても見つからず、多くの研究者があきらめかけていました。

系外惑星の存在が証明された

ところが21世紀目前の1995 年、ついにスイス・ジュネーブ大学のミシェル・マイヨール、ディディエ・ケローらのチームが、地球から約50光年の距離の恒星 ぺガスス座51番星(51 Pegasi b)を周回する惑星を発見しました。彼らは当時最新鋭の高分散分光器ELODIEを備えたフランスのオート・プロヴァンス天文台(Observatoire de Haute-Provence: OHP)から、視線速度法という方法によってペガスス座51番星の惑星を観測。木星と質量が同等の巨大な惑星が、小さな軌道(太陽系で比較すると水星より内側)を、何と公転周期 4.2 日という猛烈なスピードで公転していることを確認しNature 誌に発表しました 。(ちなみにこの時、オービットは創立5年目の若い塾でした。生徒さんたちに「マイヨール教授(当時)たちが、ついに系外惑星を発見した」とを伝えたことを、アポロ11号月着陸の時同様、鮮明に覚えています。) この功績により、両氏は本年2019年ノーベル物理学賞を受賞しました。

 

直接観測が困難な系外惑星

 

系外惑星は、地球から距離が極めて遠く、中心星(恒星)の光が相対的に明るすぎるために、直接観測が困難です。そのため主に2つの方法が採られています。 1)中心星の「ふらつき」を観察する方法(視線速度法):見えない惑星の重力によって、中心星の光のカラースペクトルに生じる変化を探す方法。この変化パターンが周期的で、中心星の微小なふらつきに対応しているなら、それは惑星によって引き起こされている可能性があります。系外惑星の20%近くがこの方法で検出されました。

2)系外惑星の「影」を探す方法:観測者と中心星のちょうど間を惑星が通過する際に、惑星によって星の光度がわずかに減光するのを検出する方法。現在のところ、この方法が最も結果を残しており、NASAのケプラー(Kepler)宇宙望遠鏡は、2000年に数千個の惑星候補を発見しました。系外惑星全体の約80%がこの方法で発見されたものと言われています。

※1系外惑星:太陽系以外の恒星を周回する惑星のこと

NASA系外惑星アーカイブ(NASA EXOPLANET ARCHIVE)https://exoplanetarchive.ipac.caltech.edu/

によると2019年11月7日現在、4093個の系外惑星が発見、確認されています。今後観測機器、天文衛星や観測手法等の発展からますます多くの系外惑星が発見され、その形態が分かってくると期待されています。

(続く)

  (本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2019年12月号(2019年11月20日発行)に掲載された内容です。)