後藤敏夫のグローバル教育情報

ニュースレター

文理融合型学部①文理分断からの脱却

2019.04.15

近年、高等教育(大学・大学院)の世界では「文理融合」という言葉が大きく取り上げられています。「文理融合」とは、従来の大学教育の現場で一般的に使用されていた「文系・理系」という学問的区分にとらわれず、領域横断的な知識力と発想力を学生に習得させようとする教育方針のことです。現代社会で起こっている複合的な課題に対して、「柔軟な発想力と様々な分野の専門知識をもって解決に臨める人材」を育成する新しい高等専門教育が期待されているのです。
こうした時代の要請に応え、日本の大学にも、文理融合型カリキュラムを導入したいくつかの新しいタイプの学部(学科)が創成されています。  

データサイエンス系学部

  データサイエンスとは、社会に溢れている多くのデータに意味付けをし、《価値》を引き出す学問です。日本においては経験豊かなデータサイエンスの専門家が絶対的に不足しており、育成が急務です。2018年以降、遅ればせながら国公立大を中心に(※)データサイエンスの専門学部が創設され始めました。 ICT(情報通信技術)が急激に発展した現代において、ビジネス、政治、医療、教育、行政、都市交通、環境問題等を研究対象にする場合、数学・統計学を活用したデータ処理能力、データ分析力といった「理系的」スキルに加えて、価値創造に活かすためにマネジメント、マーケティングなどの「文系的」なスキルと様々な分析経験が必須になります。   <主なカリキュラム> データサイエンス系学部では、全く異なる次の4つのグループの科目群が用意され、それぞれの科目群に必修科目が配置されています。 ・データアナリシス系科目……統計学、その基礎である数学と応用・分析の手法 ・データエンジニアリング系科目……情報学と、プログラミング演習 ・価値創造科目(社会科学系科目)……経営・経済学、社会学、行動科学系科目の学習と価値創造の実例紹介 等 ・実践的科目……データが生まれる現場でPBL(Project-Based Learning、課題解決型学習)を行い、実践的な演習を行います。   <活躍が期待される分野、職種> 今後は、データサイエンスの知識豊富な人材が、様々な分野に数多く雇用され、中核管理職として登用されるようになるでしょう。 ・ビジネス分野:企業情報ビッグデータを解析し、経済動向を予測するマーケティング担当者、マーケティング管理責任者。 ・技術分野:ビッグデータを解析し、ビジネス戦略や課題解決法を立案するエンジニア ・その他の専門分野:データ分析技術を活用するコンサルタント、製品開発担当者、政府・地方公共団体の政策立案担当者、経営イノベーション担当および管理責任者、大学・企業・シンクタンク等の研究者、プロジェクト管理責任者など。   ※ 新設された国公立データサイエンスの専門学部 ○滋賀大学データサイエンス学部(2017年4月創設) https://www.ds.shiga-u.ac.jp/ ○横浜市立大学データサイエンス学部データサイエンス学科(2018年4月創設) https://www.yokohama-cu.ac.jp/academics/ds/index.html ○兵庫県立大学社会情報科学部社会情報科学科(2019年4月創設予定) http://www.u-hyogo.ac.jp/academics/undergraduate/shakaijouhou/index.html ○広島大学情報科学部(2018年4月創設) https://www.hiroshima-u.ac.jp/ids この分野では、様々な公的データを自由に使ったシミュレーションや社会的実践が可能な国公立大学に、大きなアドバンテージがあるでしょう。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2019年4月号(2019年3月20日発行)に掲載された内容です。)