激変する高等教育の環境 ① 2極化する大学 G型大学とL型大学
2017.09.20
アメリカ、イギリスを発信源としたグローバリズムは一息つき、一転して、大国のなり振り構わぬ『自国第一主義』と『ナショナリズム』が世界各地で猛威を振るい始めています。これに伴い、高等教育を取り巻く環境も急速に変化しています。この稿ではこの社会の2極化に伴って加速される高等教育の2極化の背景を述べます。
急激な格差の拡大が高等教育(大学教育)を2極化させる。
世界各地域の発展途上国やBRICs* 等の新興中進国と言われる国々では、大学進学率が着実に上昇、親の世代とは比較にならない程、教育水準が上昇しています。同時に、富裕層の比率も増加し、高額な英語圏を中心とした大学進学をする若者も増加しています。
一方で、グローバルセーションの負の副産物というべき【格差の拡大】が世界を覆い、高等教育にも大きな影響を及ぼしています。特に、いわゆる自由市場主義(経済自由主義)政策を採用する先進国(アメリカ、日本 等)では、中産階級の比率減少と下層階級の拡大が大きな社会問題となっています。特に、移民の多い国では、下層階級の底辺を構成し、社会的不安定さを増す大きな原因となっています。
こうした流れの中、学費・生活費の高い海外留学はおろか、給付型の奨学金を給与されないと自国の国公立大学に入学できない層が増えています。昨年のアメリカ大統領選挙で、自ら社会民主主義者を標榜する民主党のバーニー・サンダース候補が、州立大学の無償化を掲げ予想外の善戦をしたことは記憶に新しいことと思います。
こうした状況に対応して、大学(院)もG型(グローバル型)とL型(ローカル型)に2極化していく動きが出ています。
G型大学
社会のグローバル化に対応し、専門性の高いアカデミックな教育を行い、様々なグローバルスキルと育成し、各種の国際プロジェクトを通じて幅広い国際的な人脈の構築を目的とする大学です。教育・研究レベルの高さが、世界レベルであることに加えて、次の3点がG型大学の基本条件になります。
① 国際学生の比率の高さ ② 外国人教員の比率の高さ ③ 主な専門科目の教授言語が英語であること
が基本条件になりつつあります。これらの大学は海外のG型大学とのダブルディグリー(二重学位)制度や共同研究プロジェクト等により幅広い提携を結んでいます。
L型大学
これに対して、地域に根ざし、地場産業や地域の公共サービスの担い手を育成し、実践的な職業訓練に特化した大学です。これらの企業や、地方公共団体との太い連携をてこに、体験・実習教育を実施、生産性の高い職業スキルを身に着けることを目的にします。
今後、L型大学として発展が期待されるのは、財政基盤がしっかりした地方の国立公立大学や第3セクター方式の大学です。
図1 二極化する大学:G型大学とL型大学*BRICs:広大な国土で豊富な天然資源で経済成長をとげてきた ブラジル(Brazil)ロシア(Russia)インド(India)中国(China)4ケ国のこと。
この記事は、シンガポールのコミュニティ誌『Singalife』8月17・24日号に掲載された記事を再編集したものです。