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QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:薬学・薬理学コース編

2016.01.06

薬学・薬理学の各分野(各種臨床薬学、遺伝子制御薬学、生薬学、創薬科学、分子薬理学、神経薬理学、等)は、それを支える基礎科学(生化学、生理学、免疫学、衛生学、感染症学、機能形態学、脳科学、ゲノミクスやプロテオミクス等の生命情報学、分子生物学、分子解析学、等)、最終的な応用分野と言える各種医学との連携で機能する総合科学です。 薬学・薬理学は基礎研究から応用研究まで、各大学がしのぎを削る日進月歩の分野です。大学・研究機関の体制の整備、製薬企業との連携、政府系機関の戦略的予算投下が鍵です。加えて、多国籍で優秀な研究者の集中とグローバルな教育体制の整備が必須となります。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF) 専攻分野別:2位、総合:専門大学院大学のためランク外

アメリカにおける代表的な専門大学院大学の一つ。医学、看護学、薬学系分野専門の大学。学部課程のコースはなく、修士以上のみ。(UC系列で唯一) これら生命科学系リサーチは世界トップレベル。生命科学関連産業とも深い繋がりを持っていて、基礎研究から応用研究まで先端研究の最右翼の大学です。ノーベル生理学・医学賞クラスの研究者を多数抱えています。 2012年IPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏は、本大学グラッドストーン研究所の上級研究員であることは広く知られています。

王立カロリンスカ研究所 専攻分野別:6位、総合:総合:専門大学院大学のためランク外

1810年創立、軍医養成の医学学校が前身。スウェーデンにある健康科学、生命科学の専門単科大学。文字通り一学部制を堅持、世界中から集められた優秀な研究者による極めて革新的な研究と先端の教育が行われています。 王立カロリンスカ研究所はストックホルムにキャンパスを2つ持ち、スウェーデンの主要な病院の一つである王立カロリンスカ大学病院と提携しています。研究所に所属する学生総数は約8,000人弱。少数精鋭です。修士課程以上の比率は49%。外国籍の学生も多く約26%。外国籍の教授陣も約26%、極めてグローバルな環境が整備されています。人口1000万人に満たない小国がこの分野で世界TOPレベルの専門大学をもちグローバルな環境を作っていることは注目に値します。 ノーベル生理学・医学賞委員会がこの大学にあることも広く知られています。毎年本大学の50人ほどの委員がその分野の発展に大きな影響を与えた世界的かつ画期的な研究の中からノーベル生理学賞と医学賞の選考が行われます。

ノッティンガム大学 専攻分野別:8位、総合:70位

元ロンドン大学のカレッジ。1948年ノッティンガム大学として独立。※現在はラッセルグループの一校。 特に生命科学系の(医学、薬学、生化学、生理学、生命情報学等)は学部レベルから極めて専門性が高いコースが整備されています。修士以上のコースも極めてレベルが高く、世界中から優秀な研究者・教授陣と学生が集まってきています。UKの中でもグローバル度の高い大学の一つとして挙げられます。外国籍の研究・教授陣の比率は40%弱。外国籍の学生比率は30%弱。 ※ラッセルグループ UKの大規模研究型大学24校がグループに所属。UKは殆どが国立大学です。これらの24校に国家予算の約2/3の研究費が与えられます。

ライデン大学 専攻分野別:9位、総合:95位

1575年オランダライデン市に創立されたオランダ最古の大学。 日本との関連が深い大学。1855年世界で初めて日本語学科を設立したこと、シーボルトが日本長崎出島に滞在後、日本の植物学・薬学・医学、日本学の研究をライデン大学で行ったことはよく知られていす。 日本では国際政治学、考古学、国際経済学等で知られていますが、欧米ではむしろ生命科学、健康科学の分野のリサーチ、特に薬学・薬理学、生理学、神経科学、医学等の基礎科学・応用科学のレベルの高さとバイオ科学マネジメント、バイオ科学ビジネス等の新興分野にて注目を集めています。

東京大学 専攻分野別:10位、総合:39位

日本のフラッグシップ大学の薬学部だけに一級の教授陣、研究者を擁し、多様な講座群をそろえています。先端研究分野や創薬科学の分野では国内の大手製薬会社との強い連携が強みになっています。 しかし、大学のグローバル化は始まったばかり。専攻分野の教授陣は殆ど日本人。修士課程の外国籍の学生は、195人中16人(8.2%)。学部課程では専門科目を履修を開始する3年生から6年生まで188人が在籍する中、外国籍の学生はわずか4人(2.1%)です。グローバルな研究環境としての評価を得るためには生命科学分野の英語共通語化の進展と研究者・教授陣の多国籍化は避けて通れません。

パデュー大学 専攻分野別:11位、総合:89位

1869年5月6日、アメリカ合衆国インディアナ州ウェストラファイエットで創立された半公立の総合大学。(ランドグラント※にて独立経営する半公立大学)10学部、学生数約37,000人を擁する総合大学。(宇宙)工学、薬学、農学はこの大学の看板学科。極めて専門大学の色彩が強い学部群です。薬学・薬理学では分子薬理学、遺伝子制御薬学、創薬科学、分子薬理学、神経薬理学等先端分野研究に強みを発揮しています。世界で初めて月面歩行をしたニール・アームストロング氏をはじめ30人弱を輩出していることも有名です。 2010年クロスカップリングの研究でノーベル化学賞を受賞した根岸英一、鈴木章両氏はパデュー大学に在籍していたことが知られています。 ※ランドグラント 州や個人オーナーが大学の敷地、施設を提供する形態。

ジョンズ・ホプキンス大学 専攻分野別:14位、総合16位

1887年メリーランド州ボルチモアに設立。USAで初めて設立された高度なリサーチを目的に設立されたヨーロッパ型大学院大学がその前身。はじめて公衆衛生大学院が設立されたのもこの高等教育機関です。現在は学士課程を備えた総合大学ですが、修士課程以上の学生比率が63%と高く、専門大学院の伝統がしっかり継承されています。 現在では医学、薬学、生理学、生物学等生命科学/健康科学の先端研究に強みを発揮しています。本学出身者のノーベル生理学・医学賞受賞者が17人。これはノーベル賞受賞者36人中の約半数を占めます。 全体の43%の研究者、教授陣は外国籍。グローバル度はUSAではトップレベルといえるでしょう。革新的な研究・教育内容と知的切磋琢磨できる環境が学生を育てています。 1954年フィールズ賞を受賞した故小平邦彦氏はジョンホプキンス大数学科で教授として教鞭をとっていたことで知られています。 薬学・薬理学 (続く)次回は歯科学【Dentistry】を取り上げます。 ※「QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:薬学・薬理学コース編」は、世界大学評価機関「Quacquarelli Symonds(QS)」が公表している「QS World University Rankings by Subject 2015」のデータに基づいて、記事作成、編集しています。 >QS世界大学総合ランキング2015/16はこちら。 ワールドクリエィティブエデュケーション CEO オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫