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QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:土木工学コース編

2015.08.26

世界各地の成長地域で土木工学技術者の重要が高まっています。

アセアン(東南アジア諸国連合-Association of South-East Asian Nations)10ヶ国*は、2015年末AEC(ASEAN経済共同体)合意に向けて走り出しています。AECは、関税の実質撤廃とビザ取得の簡素化を軸に人と物の流通を更に活性化させ、【人口6億人の単一市場形成・・1大経済圏】を構築することを目的としています。いわば、EU(欧州共同体)と同じ構想です。経済圏構築のためには、各国を横断する高速道路、橋梁、発電施設、港湾施設、上下水道施設等のインフラ建設が第一段階の大プロジェクトとなります。そのため、土木工学のスペシャリスト(技術者)集団がAECに加盟する各国に必要となります。そこでは、専門用語のみならず、プロジェクトの公式文書や日常のコミュニケーションから専門家による会議まですべて英語が共通語となるのは言うまでもありません。 その他の成長地域でもインフラ造成から各種土木工学の大きな需要を生みますので、土木工学系のスペシャリストはこれから当分の間、引く手あまたとなることが容易に推測できます。 紀元前2500年前の古代エジプトのピラミッド、ローマ帝国の水道橋、中国の歴史的王朝や中央アジアの城郭都市等、古代都市建設においても、土木工学が牽引する都市のインフラ整備が国家を挙げた一大事業であったことはよく知られています。 今回は、今後、ますます需要が高まると予想される土木工学に焦点を当て、この分野で評価が高い専門教育を行っている4つの大学を紹介しましょう。 *アセアン(東南アジア諸国連合-Association of South-East Asian Nations)加盟国10ヶ国。

デルフト工科大学【オランダ】 専攻科目別2位 総合64位 

干拓、治水といえば古くからオランダが有名です。明治時代に来日したオランダ人技術者たちが治水、干拓等の土木工事の指導をしたことはあまり知られていませんが、利根川、琵琶湖・淀川水系の治水改良から戦後の八郎潟の干拓計画策定まで彼らが深くかかわっています。 オランダはライン川、スヘルデ川、マース川、の3河川河口地域に位置し、国土の約26%が海面下、約20%が干拓地です。こうした国土の治水、埋め立て事業に長年の国家を挙げて取り組んできた実績と伝統が、デルフト工科大学の土木工学科の抜群の強みとなっていると言えるでしょう。 他にも理工系分野の先端専門研究で世界的に極めて評価が高いこと、この大学もスイスと同様、修士課程以降は英語による授業が主流であることが相まって、100ヶ国以上の国から多くの優秀な研究者と留学生が集まっています。 土木工学コースには、構造工学【鉄道、道路、橋梁、ダム等】、水理工学【海岸工学、河川工学、浚渫(しゅんせつ)工学等】、都市工学【交通工学、上下水道管理工学、景観設計管理等】、地質工学【地震による災害防止研究、地下水保全管理等】、気候工学【二酸化炭素除去削減による気候環境悪化防止等】に至るまで、幅広く細分化された専門分野のコースが用意されていています。

シンガポール国立大学(NUS) 専門科目別3位 総合12位

建国50周年を迎え、日夜発展するシンガポールですが、これほど急激に国土の形状が変化した国はないでしょう。因みに1965年独立当初575?だった面積が埋め立てで何と24.5%も国土が広がり2015年現在、約716?になっています。MRTMass Rapid Transit・地下鉄)新線建設や延伸、高速道路の拡張、空港の大幅拡張、HDBHousing Development Board・公団集合住宅)の建設、市街地拡張に伴う上下水道の建設、緑地帯の保存管理等、国中で恒常的に新たなインフラ整備を進めています。 これらの基礎を支えているのがNUSの土木工学コースです。幅広い専攻が選択できますが、国内にほとんどゼネコンがなく、大規模工事は海外の企業に発注する当地の実情に合わせたかなり実践的な内容が多く取り揃えられています。たとえば、技術関連の研究ばかりでなく、プロジェクトマネジメントのスペシャリスト養成のためのマネジメント科目や、国策として重視している環境工学を合わせて選択できるコース設定となっています。今後増える東南アジア周辺国のインフラ整備の研究と教育の中心として、今後更に発展することは必定でしょう。

インペリアルカレッジロンドン  専攻科目別4位 総合8位

土木工学は植民地政策における総合的インフラ整備の伝統の長い大英帝国のお家芸です。インペリアルカレッジは1907年創立された理工系、医学・生命科学系に特化されたイギリスを代表する大学で、その専門性の高さ、先端性がますます評価が高まり、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)と並び称されています。世界的な研究レベル、各国のTOPレベルの大学や国際企業との太い提携関係から世界125ヶ国出身の研究者、学生が集まり研究、勉学にしのぎを削っています。特に研究者と目指す学生には極めて刺激的で贅沢な環境といえます。 土木工学の専門分野でも学部1年生からかなり専門的でレベルの高い授業が用意されていて、しかも幅広い専門科目群に加えて関連の地理学、環境学系科目等がうまく履修できるように講座が組まれています。意欲が高く、目的が明確な学生には4年間で学士号から修士号までがとれるコース、更に1年の海外大学実習(オーストラリア、香港、USA およびEU各国)が組み込まれたコースもあり、世界的な人気が高いことも頷けます。

香港大学(HKU) 専攻科目別9位 総合28位

シンガポール国立大学(NUS)と何かと比較されてきたのが香港大学(HKU)。1997年6月まで英国領であった伝統から、中国に返還されてから20年近く経った今も、殆どの授業が英語で行われています。また、外国籍の研究者、教授陣が多く、世界ランキングでは中国大学の中では、常に最高位にランキングされています。 香港はこの30年、凄まじい勢いでインフラ整備(香港島-九龍半島館の3本の海底トンネル、MTR<Mass Transit Railway・地下鉄>,新空港、市内をつなぐ大型橋梁と高速道路、ビクトリアハーバーの拡張と港湾施設等の建設)を進め、華南地域の中心としての位置を不動のものにしてきました。隣接する珠江デルタや広州のインフラ整備にも大きな存在感を発揮しています。まさに、これらのプロジェクトを支えているのが香港大学の土木工学コースといっても過言ではなりません。

土木工学修正

(続く)次回は経済学【Economics & Econometrics】を取り上げます。 ※「QS世界大学専攻分野別ランキング2015 解説記事:土木工学コース編」は、世界大学評価機関「Quacquarelli Symonds(QS)」が公表している「QS World University Rankings by Subject 2015」のデータに基づいて、記事作成、編集しています。 >QS世界大学ランキング2015/16はこちら。 ワールドクリエィティブエデュケーション CEO オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫