後藤敏夫のプリズム分析 何故世界大学ランキングが問題なのか?
2015.04.01
何故世界大学ランキングが問題なのか?
①日本の大学はG型大学へテイクオフできるのか?
昨年SGU*が発表され、日本でも世界大学ランキングがようやく注目を浴びるようになりました。従来からG型大学としてはUSA、UKの2か国の大学が圧倒的強みを発揮、オーストアリア、カナダ等の英語圏とスイス、フランス等のフランス語圏がそれに続くレベルを保持してきました。
近年は成長著しいシンガポール、香港(中国)韓国、等のアジアの大学群の 国際的評価が急上昇しています。これは、大学の教育・研究のレベルが上がっているだけでなく、国際的な教授陣、英語による専門科目の提供等が周辺国の優秀な学生にとって魅力的なためです。いわばL型(ローカル型)からG型(グローバル型)の大学へのテイクオフがされていると言い換えることができます。 対照的に、日本のトップ大学の東大、京大を始めとする大学群がG型大学としての評価が上がらないことが大きな問題となっています。
*SGU Super Global University(スーパーグローバル大学)
昨年10月に文部科学省が、日本の大学の国際競争力向上とグローバル人材育成を図るために始動した特別プロジェクト【スーパーグローバル大学創生支援】で採択された37大学※のこと。
日本では大学のプレステージやランキングによる国内評価が主流でした。しかも、そのランキングは大学の教育内容ではなく入学試験難易度を表現する数値としての偏差値がそのまま引用され、受験生の志望大学選びに大きく影響してきました。特に、大卒の就職は、そうした大学評価をもとに、企業の人事採用担当者が選考をするといった伝統的な構造となっていました。
しかしこれでは、L型大学としての学生の評価でしかありません。現在の世界の大学のグローバル化の進展の中では、国内の評価ではなく、グローバルな労働市場や研究の世界で評価されることが重要になってきています。言い換えると、G型大学としての評価が主流となっています。現在、一般的に広く認知されている世界の大学ランキングは次の2つあります。Quacquarelli Symonds Ltdが発表するQS World University Ranking(以下QSランキング) と Times Higher Education が作成するThe World University Ranking(以下THEランキング)です。
2010年までは、この2社が提携(QS社が作成)してランキングを発表していましたが、評価基準に関して対立が生じ、2011年からTimes Higher Educationは独自のランキングを発表するようになりました。 前者のQS社が国際企業や各国の研究者の評価、構成員の多様性<留学生・外国人教員の比率>の比重に重点が置かれているのに対し、後者のTimes Higher Education社は員一人当たりの学生数、博士授与率等と教員・学科の外部収入に重点が置かれています。 従って研究のレベルだけではなく、学部教育レベルに関する評価やグローバル企業からの評価、プレステージ、環境のグローバル度を見る場合には、QSランキングを使う場合が多くなります。
世界大学ランキングはG型大学の評価の指標
こうしたことから、「世界大学ランキング」がそのまま「世界G型大学ランキング」になると言えます。2014年QSランキングでは、日本の最高ランクの東大でさえも31位、京大が36位、日本の大学のランキングはかなり低くなってしまっています。それ以下の大学はかなり苦戦しています。
グローバル展開をしている企業は、世界大学ランキングをもとに、採用選考を行いますので、東大や京大の卒業生より、ランキング上位のシンガポール大・香港大卒等の学生のほうが明らかに有利となってしまいます。 現時点で、G型への転換が遅れた日本の大学は、速やかにG型化を果たさなければ、世界の動きに乗り遅れ、国際評価が下がっていくことになります。そればかりでなく、日本国内では、一流大学であっても、L型大学として、生き残りをかけた淘汰の波にもまれていくことになります。 SGUという国家プロジェクトが始まった日本の大学は、まさに大学のグローバル化のスタート地点に立ったと言えます。世界大学ランキングという、G型大学の熾烈な国際競争の中でその価値と評価を高め、最速にランキングをあげ、いかに勝ち残っていくかという大きな課題のさなかにいると言えます。
(続く)
ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫