後藤敏夫のグローバル教育情報

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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 世界の大学教育の大きな変化 -3

2014.09.15

2014.09.15
(4)USA一極集中から世界分散へ 急速なグローバル化の進展に伴って、世界的に大学、大学院の留学生数は増加しつづけています。従来、留学先の主流は何といってもアメリカでした。特にアジ アや南アメリカ等の富裕層の優秀な子弟はアイビーリーグ(※)をはじめとする名門大学を目指してきました。一方、戦後の日本では、先月お話したように高い 教育レベルをもつ「日本人の日本語による日本人のための大学」を保持しているため、ごく一部を除き、留学ではなく日本の難関大学を目指してきました(つい 昨年までは海外大学へ留学する学生数が減少傾向にありました)。 ※アイビーリーグ…アメリカ東部名門8大学(Brown, Columbia, Cornell, Dartmouth, Princeton, Pennsylvania, Yale) 。いずれも世界大学ランキングで最上位クラスに位置する。

成長地域やヨーロッパの大学の人気急上昇

ところが最近、学生たちの留学先に大きな変化がみられます。アジア、中東の経済成長地域にある大学のレベルが高くなるに伴い、人気が急速に高まり、 学生の留学先が分散する傾向にあります。USAのアイビーリーグ※やスタンフォード大、MIT等のトップレベルの大学に入学できないなら、相対的に費用が 安く、また教育レベルが高く、しかもネットワーク構築力の高い経済成長地域でのトップ大学の人気が出るのは当然の流れです(約3000もあるアメリカの大 学はレベル差がきわめて大きく、レベルが高くない大学でも、奨学金が認められない限り学費が高い)。 実際、当地シンガポールの3大学…シンガポール国立大(NUS…QS世界ランキング24位)、南洋工科大(NTU…同41位)、シンガポール経営大 (SMU)や、中東のニューヨーク大のアブダビキャンパスの人気が急上昇中です。マレーシアのジョホールバルのヌサジャヤ地区にできたイギリスのサウザン プトン大(同86位)、ノッテインガム大学(同75位)、ニューキャッスル大学(同129位)も注目を浴びています。 大学専門教育の本家本元イギリスはもとより、フランス、オランダ、ドイツ、スウェーデン、スペイン等のEU諸国の大学(いずれも英語で授業が行われる大 学)は人気復調、世界各国からの留学生数が増えています。優秀な教員と様々な国籍の留学生が在籍する大学に人気が集中しています。

専門教育のレベルが高くVISAが取得できるオーストラリアの大学

学部課程では教養教育(リベラルアーツ)に比重を置くUSAとは異なり、オーストラリアは大学1年から専門教育が中心です。通常の学部は3年ですが 教育レベルは極めて高く、専門性の高い4年のコースを修了すると、アメリカや日本の大学の修士課程1年修了以上と同等のレベルに該当します。しかも、卒業 後の就業VISAが取得しにくいアメリカと異なり、オーストラリアでは2年間の就業VISAがほとんど無条件に取得できます。 バイオ系や農学系、航空工学等の理工系や国際ビジネス等がきわめて強いクィーンズランド大学(QS世界ランキング43位)、国際政治学や心理学等さまざま なリサーチや会計学で有名なオーストラリア国立大学(ANU…同27位)、法律、経済学、医学等が世界トップレベルであるメルボルン大学(同31位)等の オーストラリアの大学もアメリカの上位大学に引けはとりません。これらの大学で高度な専門分野をしっかり勉強して学位取得卒業後、オーストラリアで就職。 その職歴をもってその後は旧英連邦諸国、日本、シンガポールやASEAN諸国に転職という流れもかなり一般的になりそうです。 (続く) (本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2014年9月号(2014年8月20日発行)に掲載された内容です。)