【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 IBのDPにみられるPISA型学習
2013.11.10
2013.11.10
学力の考え方が大きく変わる
日本でも世界共通語である英語による大学教育を可能にする「バランスの良いアカデミックな英語教育」への急転換が始まりそうです。 と、同時に体系的な知識をどれだけ正確に記憶しているかを一回のテストで試す「入試」という東アジア特有の選抜システム(一つの正解しかない問題に対する解答技術を競うこれまでの学力審査・・・現代版科挙)に対する抜本的な見直しが行われようとしています。 問題や条件をいかに正確に論理的に読み取れるか?解答が一つとは限らない問いに対して自分なりの解答をいかに表現するか?ポイントを外さず論理的かつ適切に説明できるか?自分なりの観点に立ったユニークなコメントを表現できるか?・・・このような将来大学でのリサーチや問題解決に直結するような学力をPISA型学力観※といいます。急激な社会の変化の中で人、モノ、情報が激しく行き交うグローバル時代に必要な学力は、まさにPISA型の学力と言えるでしょう。 ※OECDが3年に一回実施する国際学力到達度調査PISA(Programme for International Student Assessment)から注目を浴びる国際バカロレアのディプロマプログラム(DP)
こうした世界的な潮流の中で、国際バカロレア(IB)、特に大学準備過程(大学入学前の2年間の課程)のディプロマプログラム(DP)には大きな注目が集まっています。世界各国の大学入学の国際基準としての評価が急上昇し、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、EU各国、アジア主要国の難関大学がこぞってDPの高スコア獲得者を優先的に入学させ、奨学金を出したり、DPで取得した科目を大学での卒業単位として認定し大学を早期卒業させたりしています。レベルの高い学校でのDPのカリキュラムの導入は世界的な大きな流れです。シンガポールでも多くのインター校や一部のローカルトップ校で導入しています。 DPが世界標準のカリキュラムとしての評価がこれだけ高いのは、下記の理由によります。 ① 学習の手法が高度でかつリサーチ型であること(大学1~2年レベルまで踏み込んだ内容) ② 広い科目選択が必須のため知識教養が偏らないこと ③ TOK(知の技法)、Extended Essay(自由選択したテーマで作成する高校の卒業論文)といった 必修のプログラムで知的にかなり鍛錬されること ④継続的なコースワークが行われ、2年間の最後に修了試験でスコアが決定される長期戦であり、 生徒の知力だけでなく持続力が試されるプログラムであること ⑤CAS(Creativity, Action, Service)という社会活動、芸術活動等が必須であり、点取り虫的な学生 が高い評価を取得できない仕組みになっていること ⑥どこの国の教育政策にもよらないグローバルな内容であること ⑦プログラムは全面的に公開されていて、世界中どこからも内容が参照でき、品質やレベルが確認でき ること このように、DPでは極めて高度なPISA型学力が必要になります。(続く)
(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2013年11月号(2013年10月20日発行)に掲載された内容です。)