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後藤敏夫の注目の大学④ ~北海道大学~

2026.04.09

後藤敏夫注目の大学④ ~北海道大学~

北海道大学(以下、北大)は、北の大地と海洋の恵みに溢れた北海道の大地に拠点を置いています。そのため、北大の最大の強みは、幅広い理系分野における研究力にあると言えるでしょう。

充実した教育・研究フィールド*1*2

当職が考える北大の最大の魅力の一つが、豊潤な北海道の自然を活用した教育・研究フィールドです。なんと、以下の合計16か所もの教育・研究フィールドを所有していています。1つの大学が保有するフィールドの総面積は実に世界トップクラスです。これらのフィールドで行われる研究活動を含め、様々な一流の研究が産み出されています。

  • ・森林圏
     天塩研究林、中川研究林、雨龍研究林、札幌研究林、苫小牧研究林、檜山研究林、和歌山研究林
  • ・耕地圏
     生物生産研究農場、植物園、静内研究牧場
  • ・水圏
     厚岸臨海実験所、室蘭臨海実験所、洞爺臨湖実験所、臼尻水産実験所、七飯淡水実験所、忍路臨海実験所

北大ならではの分野研究が勢ぞろい*3*4*5

北大の特に評価の高い分野を挙げてみましょう。

University Impact Rankings 2025 (国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」においての大学の進展と貢献を評価する世界的なランキング) では、北大は以下の分野において国内外で牽引する実力を示しています。

  • ・総合(持続可能な社会への貢献) 世界44位(国内1位)
  • ・SDGs 2 飢餓をゼロに 世界2位(国内1位)
  • ・SDGs 9 産業と技術革新の基盤をつくろう 世界49位 (国内5位)
  • ・SDGs 14 海の豊かさを守ろう 世界17位 (国内1位)
  • ・SDGs 15 陸の豊かさも守ろう 世界21位 (国内1位)
  • ・SDGs 16 平和と公正をすべての人に 世界35位(国内1位)
  • ・SDGs 17 パートナーシップで目標を達成しよう 世界41位(国内1位)

農学・食品科学*6*7*8*9*10

北海道は耕地面積(2024年)、および、農業産出額(2023年)で全国トップを誇ります。我が国の重要な食料供給地域である北海道において、最高峰の教育・研究機関として、作物学、植物病理学、土壌学、農業土木学、細胞工学などの研究が進められています。

SDGs 研究例: 遺伝子工学や品種改良に利用可能な一倍体制御技術の確立 (SDGs 2,13,14) 、栄養素を循環させる環境負荷の少ない農業体系の確立(SDGs 11,12,15)、シードル(リンゴから作ったスパークリングワイン) 生産の効率化と品質向上を目指した種子無しリンゴの育種基盤の構築(SDGs 9,15)など。

水産・海洋科学*11*12*13*14*15*16*17*18*19*20

北海道は海に囲まれているだけでなく、陸にも湖、湿地、河川など多様な水圏環境を有しています。単純に「海」といっても例えば、日本海側と太平洋側では海流や海水温が大きく異なり、生息するプランクトン、藻類、魚類、海棲哺乳類なども異なります。

こうした恵まれた環境を背景に、海洋計測学、水産資源管理、水産育種(品種改良)、養殖技術などの研究が盛んです。

SDGs 研究例:
3000台以上のフロート(アルゴフロート)と人工衛星を用いて地球全体の海洋を観測し、海洋環境の実態や気候変動がもたらす変化を明らかにし、予測に役立たせる国際プロジェクト「アルゴ計画」には北大を含む30か国以上の国と機関が参画しています (SDGs 13,14) 。他にもニホンウナギの完全養殖技術の開発(SDGs 14) 、キタムラサキウニの自動給餌装置の開発につながる行動モニタリング (SDGs 14) 、人工衛星を用いた海洋性植物プランクトン遠隔探査方法の開発(SDGs 14) など当職が注目している研究例が多数あります。

環境・地球科学*21*22*23*24*25*26

大自然を生かした研究を強みとし、気候変動、地球環境、生態系、森林科学などの分野でも日本トップクラスの研究が行われています。

中でも低温科学は北大を代表する分野であり、日本国内で他の追随を許さない存在といっても過言ではありません。1941年に設立された低温科学研究所は、北大初の附置研究所として海洋物理学、地球化学、植物生理学、雪氷学、宇宙物質科学など、分野横断的な研究プロジェクトを国際的に展開しています。

SDGs 研究例:
深海の微生物による温室効果ガス削減(SDGs 13,14)、北極域の生物多様性の研究(SDGs 13,14) 、海氷減少が海洋循環、生物生産や気候変動に与える影響(SDGs 13) 、北極圏の“地盤変動”を遠隔探査 (SDGs 9,13,15)など。

生命科学・医療 *27*28

地味ではありますが、分子生物学、再生医療、感染症・免疫研究の分野においても、北大は国内で高い評価を得ています。

SDGs 研究例:
ストレスに起因する病気の治療薬とバイオマーカーの開発(SDGs 3,9)、光の様々な波長を利用した癌治療法、創傷治癒・組織再生促進療法の開発(SDGs 3) など。

化学・化学工学 *29*30*31

2010年ノーベル化学賞受賞者である 鈴木章先生(北海道大学名誉教授・元工学部教授)を輩出した大学でもあります。有機化学、触媒科学、物質・材料研究の分野で世界的な成果を挙げています。

鈴木先生は、従来取り扱いが困難であった新しい有機化合物を作るための炭素原子同士の結合による化学反応「クロスカップリング」のより安全で実用につながる手法を確立し、医薬品、農薬、液晶、発光材料などの製品開発・量産化に大きく貢献しました。

他にも炭素資源を環境にやさしいエネルギーに変換できる触媒プロセスの開発(SDGs 7,9,13)など様々な研究が進行中です。

獣医学*32*33*34*35*36*37*38*39*40*41

札幌農学校(北大の前身)が 1876年に ウィリアム・スミス・クラーク を中心に創設されました。クラーク博士の名言「Boys, be ambitious」は、今も語り継がれています。その後、1878年にハーバード大学医学部卒のジョン・クラーレンス・カッター氏が来日して日本で初めての獣医学教育を導入しました。1877年に開講された駒場農学校(東京大学農学部の前身)も同時期に獣医学教育を始めています。

現在でも獣医学を学べる大学は全国で20校未満と少なく、北大では解剖学、生理学、薬理学、毒性学、野生動物学、感染症学、寄生虫学など、多岐にわたる研究が行われています。

研究例:
哺育牛群から体調不良個体を早期検出する常時監視技術の開発(SDGs 9,15)、家畜・ペットの難治性疾病に対する免疫療法の開発(SDGs 2,3,9)、 犬の血管肉腫の研究、冬眠動物の筋幹細胞の低温耐性に関する研究 など。

おわりに

世界有数の自然環境を誇る北海道において、多様で一流の研究を精力的に行っている北大。自然や環境、理系分野の研究・学習に関心があり、寒冷地での生活を楽しめる生徒たちにとって非常に魅力的な選択肢と考えます。ぜひ、興味のある生徒は北海道大学とそのフィールドを見てきてはいかがでしょうか。

北海道大学の概要*33*42*43*44

  • ・1876年、前身である「札幌農学校」として誕生。
  • ・マサチューセッツ農科大学(現・マサチューセッツ大学アマースト校)の学長であったウィリアム・スミス・クラーク氏が初代教頭として着任し、農場を設置。植物学、英文学、化学、数学、土木工学などの教育を導入した。
  • ・QS世界大学ランキング 2026: 世界170位(全国7位)
     (同ランキング 東大36位、阪大91位)
  • ・2025年5月1日時点
    • ・学部学生数(1年次~6年次):11,365人
    • ・大学院生数(修士課程・専門職学位課程・博士課程など):6,650人
    • ・教員数(教授、准教授、講師、助教、助手の合計):1,960人
    • ・学部数:12
       文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、
       歯学部、薬学部、工学部、農学部、獣医学部、水産学部

2026年4月9日

後藤敏夫
オービットアカデミックセンター 代表
ワールドクリエィティブエデュケーション CEO

 

脚注

*1  北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター (n.d.),センター概要,北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター。
*2  北海道大学 (2020),Research Times 知のフィールド(2020年度),北海道大学。
*3  Times Higher Education (n.d.),Hokkaido University,Times Higher Education。
*4  Times Higher Education (n.d.),University Impact Rankings 2025,Times Higher Education。
*5  農林水産省 (n.d.) ,SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット(外務省仮訳),農林水産省。
*6  農林水産省 (2025) ,北海道の農林水産業の概要,農林水産省。
*7  北海道大学 農学部 (n.d.) ,大学院農学研究院,北海道大学 農学部。
*8  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2018年4月3日) ,一倍体性が動物個体発生に及ぼす影響の理解,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*9  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2024年9月25日) ,栄養素を循環させる農業を多面的に達成する,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*10  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2024年9月30日) ,シードル加工用の種子無しリンゴの育種基盤の構築,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*11  北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター (2023) ,2023年度 北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 水圏ステーション 公開水産科学実習,北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター。
*12  北海道立総合研究機構 (2013) ,北海道を取り囲む海|水産研究,北海道立総合研究機構。
*13  北海道大学 水産学部 (n.d.) ,LASBOS SDGs(目標14:海の豊かさを守ろう),北海道大学 水産学部。
*14  北海道大学 大学院水産科学研究院 (2023) ,水産学部について,北海道大学 大学院水産科学研究院。
*15  北海道大学 大学院水産科学研究院 (2024) ,海洋資源科学科,北海道大学 大学院水産科学研究院。
*16  海洋研究開発機構(JAMSTEC) (n.d.) ,ARGO計画と目的,海洋研究開発機構(JAMSTEC)。
*17  海洋研究開発機構(JAMSTEC) (2020) ,ARGO(紹介資料),海洋研究開発機構(JAMSTEC)。
*18  北海道大学 水産学部 (n.d.) ,ウナギの人工種苗生産,北海道大学 水産学部。
*19  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2024年9月30日) ,給餌効率の向上を目的とした画像認識技術によるウニの行動モニタリング,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*20  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2018年4月3日) ,宇宙からの海洋性植物プランクトン探査,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*21  北海道大学 (n.d.) ,低温科学研究所(for future students),北海道大学。
*22  北海道大学 低温科学研究所 (n.d.) ,研究部門・組織,北海道大学 低温科学研究所。
*23  北海道大学 (2025年7月10日) ,深海の微生物が開く環境問題解決への新たな扉,北海道大学。
*24  北海道大学 (2023年6月8日) ,北極域における生物多様性の変化を数理モデルで探る,北海道大学。
*25  北海道大学 (2022年12月1日) ,海氷減少の巨大な影響を探る,北海道大学。
*26  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (n.d.) ,北極圏の“地盤変動”をリモートセンシング,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*27  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2018年4月3日) ,ストレスによる病気の治療薬とバイオマーカーの開発,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*28  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2022年2月7日) ,オプトジェティクスによる新規医療技術の開発,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*29  北海道大学 工学部 (2010) ,教員紹介(アーカイブ),北海道大学 工学部。
*30  島津製作所 (2024) ,Boomerang:大学研究紹介,島津製作所。
*31  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2018年4月3日) ,ナノ微粒子を用いる炭素資源由来の窒素の無害化除去,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*32  北海道大学 獣医学部 (n.d.) ,研究・社会活動,北海道大学 獣医学部。
*33  北海道大学 (n.d.) ,北海道大学年表(1876年~),北海道大学。
*34  日本獣医師会 (n.d.) ,獣医学関連解説記事,日本獣医師会。
*35  アジア歴史資料センター (n.d.) ,用語解説,アジア歴史資料センター。
*36  進路ナビ (n.d.) ,分野別大学検索,進路ナビ。
*37  北海道大学 獣医学部 (n.d.) ,研究詳細,北海道大学 獣医学部。
*38  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (2024年9月25日) ,群飼育下の乳用雌哺育牛から体調不良個体を早期検出するリアルタイムモニタリング技術の開発,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*39  北海道大学 産学・地域協働推進機構 (n.d.) ,動物の難治性疾病に対する新規制御法の開発,北海道大学 産学・地域協働推進機構。
*40  北海道大学 (2026年2月12日) ,イヌの血管肉腫の新規患者由来モデルを樹立~糖が乏しい環境で働くリジンラクチル化の新たな役割を発見~,北海道大学。
*41  北海道大学 (2025年12月22日) ,寒さに耐える冬眠動物の筋幹細胞 ~再生能力を意図的に抑える「省エネ戦略」~,北海道大学。
*42  国土交通省 北海道開発局 (n.d.) ,「Boys, be ambitious!」-クラーク博士が残したもの,国土交通省 北海道開発局。
*43  QS Top Universities (n.d.),World University Rankings(Japan),QS Top Universities。
*44  北海道大学 (2025) ,北海道大学概要(2025年),北海道大学。