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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 シンガポール在住生が成功する中学受験とは?下

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2012.12.20

「学ぶ力」と「PISA型学習力」

従来、学力が高いといえば、体系化した知識や解法をたくさん知っていることを意味しました。図書館に足を運んで調べなければならなかった時代には【知識の量=学んだ力の高さ】が重要でした。しかし、ほとんどの知識がインターネットで瞬時に調べられる時代になってしまいました。加えてこれらの知識や常識はすぐに陳腐化してしまうので絶えずアップデートしなければなりません。この時代には、必要な情報を如何に集めるか?集めた様々な情報を如何に評価するか?しかも問われる問題・課題は解答がひとつとは限らないものが多くなっています。立場や前提が異なれば解答は自ずと変わってきます。これらの課題に対して、【情報を整理、推論し、自分なりの結論を出せるか?それを誰にも理解できるように論理的に記述できるか?=学ぶ力】がより大事になっています。こうした学力を「PISA型学力」といいます。多くのインターナショナルスクールではこのタイプの【学ぶ力】と【受身でない学ぶ意欲】を学習評価の基準においています。ところが、日本では一部の学校を除き、古いタイプの試験、つまり【学んだ力】を試す古い学力観をもとにした試験が未だに幅を利かせています。また、学習のツールとしてPCやネットを使うシステム・教育体制の整備が他の先進国と比べて遅れているのは非常に残念なことです。

多民族国家シンガポールの「現地体験」と「英語学習の時間」を確保するには?

4科目中学受験のもう一つの大きな問題は、せっかくの多民族国家シンガポールの現地体験と英語学習の時間がなくなってしまうことです。この2つは子供たちがグローバル時代に生き残るための必須のスキルと経験です。日本でも意識の高い家庭では小学3年生くらいから英語学習を始めることが多くなりましたが、中学受験準備が本格化する5年生(週3回~4回の通塾+週例テストという環境)になる頃には中学受験勉強との両立ができず、英語学習をやめてしまう生徒がほとんどです。これは大変残念なことです。英語学習の理論から言って、10~11歳以前から学習を始めた生徒と中学以降から始めた生徒とでは伸びが大きく違うのは常識になっています。その証拠に多くの国では英語学習は小学校低・中学年から開始されます。

シンガポールは日本人学校でも積極的にイマージョン教育を行っています。また治安が極めて良好で子供たちが外で容易に英語を触れる機会が多いという大きな利点があります。この恵まれた環境をうまく利用しない手はありません。多民族・多宗教という環境も子供たちにとって、極めて恵まれています。様々な異なった生活習慣・食事等に触れることで、世界は多様だということを子供たちは実感できます。

「中学受験」と「現地体験・英語学習」を両立させるには?

シンガポールで生活をする皆さんにとって英語学習と中学受験が両立できる「帰国子女枠受験」を採用する学校が急増しているのは朗報です。1900年代に数校が開始した帰国枠中学受験は、現在では実施校が100校を超え、まだ増えそうな状況です。学校のレベルや受け入れ態勢は様々ですが、一般的には「算数・国語+面接(作文)」か「算数・国語+英語+面接(作文)」という、英語学習や現地体験を活かせるような科目設定と選考方法の配慮がなされています。算数・国語の問題の難度も一般入試ほどではなく、基礎的学力と学習スキルを判定する内容が多くなっています。また、4科目入試と異なり、点数だけでなく学習スキルと学ぶ意欲を重視した「PISA型」の選考になっています。英語の試験がない算国2科目のみの入試でも、面接で英語の学習歴についてアピールすることもできます。最近では難関進学校も帰国枠入試を採用する傾向が見られます。「国内4科目受験で入学してきた生徒と比べて帰国枠で入学した生徒のその後の学力は大丈夫か?」という当方の問いに、東京の某難関進学校の教頭先生は「学習スキルと意欲の高い海外体験の豊かな生徒なら、中2の2学期くらいで国内生と遜色なくなり、問題ありません。加えて、日本人学校の出身者でも、英語学習歴のある帰国生は英語の伸びが違います。今後、グローバル化の進展を考え海外大学進学希望者や国内でも英語で専門科目の授業を希望する生徒が増えることを考えると、帰国枠で入学してくる生徒さんに期待がかかります」と答えてくれました。グローバル化する社会の中で、従来型の国内の大学進学のみに主眼を置いた進学校ではなく、今後は海外大学進学も視野に入れ、バイリンガル教育を志向する学校の評価が高くなるのは当然といえましょう。

 

「4科目受験」と「帰国枠受験」は違うもの

「まずは4科目受験を目指し、思うように伸びなければ帰国枠に切り替えて受験」という試験対策だけを考慮し『大は小を兼ねる』発想で中学受験を考えている保護者の方がいますが、これは本末転倒な考え方です。そもそも2つの制度は目的が違います。帰国枠は受験と現地体験・英語学習を両立できるように配慮された制度です。4科目受験を目指していて、中途で帰国枠に切り替えた場合、現地体験も英語学習も中途半端になります。帰国時期を想定してどちらかに絞るべきでしょう。新しい時代の動向に絶えず留意し、シンガポール体験をうまく活かす学習プランを実行し、お子さまたちの未来を開いていってほしいものです。     (終)

オービットアカデミックセンター会員情報誌プラネットニュース 2012年12月20日号 掲載

 

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