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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 2013年上半期 教育ニュースより

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2013.06.10

2013.06.10
「イェールNUSカレッジ」が意味するもの

今年8月、シンガポール国立大学(NUS)とアメリカのイェール大学が共同で、教養課程(リベラル・アーツ)の大学「イェールNUSカレッジ」を開校させます。シンガポール人だけでなくアジア中の優秀な学生を集めるための戦略ですが、なぜシンガポールなのか。それはシンガポールの教授言語が英語だからです。

日本でも京都大学が一般教養の講義の半分を英語で行うことを決定したように、今は「英語ができないなら就職できない」時代です。2050年には日本の人口は3000万人減少し、GDP、年収も下がるといわれます。日本の市場が縮小すれば、日本語=民族語だけで話す人の仕事は減ります。そのような状況で日本人が生き残っていくためには、移民を受け入れるか、国外で就職するしかありません。日本国内ではほぼ日本人のみで当たり前のように日本語が通じます。それに対し、シンガポールの人口は約3分の1が外国人ですが、共通語として英語が通じます。日本人はこのような世界で生きていかなければならないのです。

日本の教育改革

自民党教育再生会議の方針からは、「教育を変えよう」という本気度が伝わってきます。「日本の受験制度はグローバリゼーションの波にそぐわない」と、国際的に事業展開する企業も危機感をもっています。一部教育関係者もそれを認識しているものの、日本の教育はグローバル化が遅れていて、根本的には変えられない状態なのです。たとえば、日本の私立大学文系学部は英国社の3科目(数学は不要)で受験できます。しかし、海外の大学ではたとえ哲学専攻であっても数学の成績が重要です。大学側は論理的な考えができない学生を必要としないのです。また、シンガポールでは中等教育段階からIT設備を導入し活用しています。変化の激しい現代社会においてはITは必須です。小学校からスマートフォンを使って学習しているシンガポール。それに対し、日本はいつまでも紙と鉛筆のみがツールです。

このような状況を鑑み、自民党は賛否両論になることを見越して教育改革案を打ち出しています。これらの改革案が実現されるかはともかく、5年以内に方向性が変わり、大きな変化が起こることは間違いありません。現在の小学校高学年の子どもたちが大学生になる頃には大きな変化に巻き込まれます。保護者世代の受けた教育の踏襲では、子どもたちは世界から取り残されます。グローバル化の波が来ることを意識してシンガポール滞在期間を過ごしたいものです。

今年3月~5月のあいだにも、日本の教育界では数々の大きなニュースがありました。

ついに東大が推薦入試を開始

まず、東京大学の推薦入試制度導入。これは、東京帝国大学の時代を含めても“初”の試みです。たとえばハーバード大学のAO入試では、高度な哲学的内容を問う面接が行われるのに対し、東大はいつまでも学科試験のみでした。また、東大には、一昔前は地方からの入学者もいましたが、現在は首都圏の進学校卒業生、そして東大進学専門の塾「鉄緑会」出身者ばかりだそうです。

このような状態を打破するためには、大学側は多様な学生を入学させる必要があると認識しています。実際に、3年に1人東大生を輩出するような地方の公立校出身の学生は、東大生のなかでも優秀だということです。ステレオタイプではない、多様な人の中に混じらないと学生の能力が上がらないと考えているのです。また、東大の学部生における外国人(在日韓国人を含む)の割合は約1%と、世界ランク上位の大学としては少なすぎることです。研究レベルはともかく、同じような学生ばかりで学生の力が伸びないため、世界ランキングも下がっています。

大学入試へのTOEFL導入

大学入試へのTOEFL導入はおそらく実現するでしょう。大学を出れば当然「仕事で使える英語」を身につけることが必要です。しかし、現在の受験英語は、社会に出てから役立っているとはいえません。実際、有名大学を卒業後、海外に赴任してカルチャーショックを受ける駐在員が多数います。

点数で見ると、韓国人の平均点数が日本人より約10点高いことに、自民党は危機感を覚えています。韓国では国内の英語教育制度が不十分なため、上位大学を狙う場合、子どものうちにフィリピンに移住するなど、外国で教育することがステータスになっているのです。

では、こうした英語教育の変化に対して保守的なのはどのような人でしょうか。実は英語の先生なのです。とくに現役の間に変化の波が到来する40歳代前半の先生は危機感をもっているはずです。「英語で英語を教える」ことが主流になると、約7割の先生は通用しなくなるでしょう。

これからの子どもたちにTOEFLは必須です。英語は既に教授言語になっていて、日本語で学び、国内だけで仕事をする人たちと、グローバルに仕事をする人たちとの経済格差がますます生じるでしょう。

京大、教養科目の講義を半分英語で

京都大学では、教養科目の講義の半分が英語で行われる方針です。香港大学やダッカ大学など、アジアの大学では講義を英語で行う傾向がますます強まっています。これはとても良い傾向だといえるでしょう。本来は世界各国から講師を招聘し、専門科目も英語で講義することが望ましいでしょう。多様な国籍の講師がいたほうが、教育環境もより良くなるのです。あるレベル以上の学校では、英語が共通語になるでしょう。

高等教育の半分は英語で受けるべきです。英語に親しんでいる生徒は、英語での授業にもついていけます。制度が変わってからでは遅いのです。受験科目としてではなく「英語で勉強する」という流れに対応できるように、今から準備しておく必要があるのです。

シンガポールでの教育がアドバンテージに

オービットは、日系大手の他塾のような「海外でも日本と同じ教育」ではなく、「シンガポールならではの環境をどう活かすか?」ということを大事にしています。現在、グローバル化の波とともに、シンガポールの子どもたちの時代が来ているといえるでしょう。

今後、高等教育が英語と日本語の両方で行われるようになるのは確実で、「バイリンガルエデュケーション」がキーワードになります。さもないと、グローバル化の波から取り残されることは間違いありません。とくに、関西の学校は理数系が難しい反面、英語教育が古く易しい傾向にあるため、変革を求められるでしょう。TOEFLも、文法問題は無くなり、イギリス英語やインド英語も含まれるといった形に変化しています。

そういった動きの中で、多民族国家であり多様な英語の飛び交うシンガポールは、理想的な環境と言えます。日本人学校ではイマージョン教育が導入されて英語教育が進んでいるうえ、オービットでも英語力をより高める講座を用意しています。一方、英語ができても母語(日本語)ができない、また両方の言語が不十分なセミリンガルといった状態にならないよう、バランスをとりながら伸ばすことも大事です。日本式の学習と英語をバランスよくブレンドさせてください。日本の中学・高校を選ぶ際も、偏差値より英語教育環境が整っているかが大切です。英語教育の質と偏差値は比例していないので、注意が必要です。

PISA型学力を重視する

オービットは、時代の変化に対応する方向で、内容を充実させようとしています。5年後、10年後を見て「今、どのような学力を身につけるべきか」を考え、PISA型学力を重視しています。解法を覚えるのではなく、その場で考える学習スキル、問題解決に必要な力を身につけていきましょう。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2013年6月号(2013年5月20日発行)に掲載された内容です。)

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