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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 東大9月入学決定の衝撃 上

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2012.02.20

 東京大学秋入学 - 第2の黒船への挑戦

昨年暮れも押し詰まった12月20日、ついに東京大学の浜田純一総長が、国際標準である秋入学に全面移行する時期について「5年前後で実現したい。東大単独ではなく、必ずほかの大学と一緒にやる」と述べ、他大学と足並みをそろえて実施する考えを示しました。更に4月に有力大学(旧帝大系国立大学、早稲田大、慶応大等)との協議組織と、産業界と大学側との協議組織をそれぞれ設ける構想も明らかにしました。

この方針転換は大きな波紋を呼んでいます。これは単に入学時期を国際標準に合わせるという意味合いではなく、大学が輩出する人材の競争力が、国際競争いわば「第二の黒船」にさらされていることを意味しているからです。

 

ひとつの背景としての「日本製品・サービスの国際競争力の低下」

従来日本の大学は基本的には、日本語で授業が行われ、主に日本人を対象にした教育を行ってきました。同質性の高い学生に対して行われる教育は極めて効率がよく、課外活動も含めて企業戦士としてのメンタリティを育ててきました(体育会系のクラブのメンバーは就職時に有利だったことは皆さんご存知ですね)。日本の企業は長期雇用を基本に、日本の大学卒の文化の同質性を前提にしたチームワークが織りなす極めて高品質なサービス・品質を強みにしてきました。

ところが1990年代後半から急速に進展したグローバリゼーションはその強みを弱みに変えてしまいました。新興成長地域の東南アジア・中国・インド等の新中間層の嗜好を十分加味し、なおかつ安価な韓国・中国の製品・サービスに比べて日本発の高い品質の製品・サービスは急速に競争力が下がっています。『良い製品をつくれば売れる』ではなく『欲しがる製品をつくる』に価値が大きく変わってきました。この競争に勝ち抜くには、販売地域の消費者の嗜好、その地域事情に熟知、そしてその製品・サービスを流通させるネットワークづくりが肝要です。

 

国際競争力が低下している日本の主力大学

グローバリゼーションの時代、高等教育に於ける重点が大きく変わってきました。教育の品質の高さが重要なことは変わりませんが、次の2点に焦点が当たってきました。

 ① 専門教育が英語で行われること

専門教育が英語で行われることが世界の流れです。ビジネス・学術研究に関してはいまや英語が共通語になりました。論文の発表や議論が英語で自由に行えるというのが、上位大学を卒業した学生にとって不可欠な能力になってきました。

 ② 在籍の学生・教員の国籍・民族に多様性があること

一緒に学ぶ仲間や教員が多民族・多国籍になっているということは、このグローバリゼーションが進展する中で大きなアドバンテージです。社会に出る前に、宗教や文化・風習の異なる学生・教員の中で揉まれるべきでしょう。単一民族・単一言語を前提にした日本人にとって、想定外の事態が多々起き、彼らとの付き合い方を学ぶ良いチャンスだからです。

 

日本の大学教育の文字通りの頂点に位置する東京大学の危機感は大きいといえます。2011年5月の調査によると、東大学部生約12,600人のうちで4年の間に海外留学(交換留学等)する学生数は何とわずか48人!東大生の引きこもり志向をはっきり示しています。高い製品の品質・サービスを保持しているが、国際競争の中で苦戦しているメイドインジャパンの姿と同じ構造です。 (続く)

 

 

ワールドクリエィティブエデュケーション CEO
オービットアカデミックセンター 代表 後藤敏夫

 

 

 オービットアカデミックセンター会員情報誌「プラネットニュース」2012年220号掲載

2013年以降の掲載記事は オービットアカデミックセンターのWEBサイト グローバル教育最新情報 をご参照ください。

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